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一歩進んだインスペクションを。

2020年11月26日 公開 / 2020年11月27日更新

テーマ:リフォーム

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 中古物件 リノベーション断熱材 効果耐震リフォーム


昭和から平成へー
元号が変わった31年前に新築した瓦葺木造住宅のホームインスペクションを行いました。

31年前、私は高校受験を控えた中学3年生。
今、私には、高校受験を控えた中学3年の次女がいます。

車を運転してるときなんかに、たまに過去を振り返る、
そんな癖が私にはあるようです。

このインペクションを終了し、会社に戻る道中、やはり自身の中三を思い起こしました。

―そうか、あの時代に建てたのかぁ。



そう考えると、この30年で住宅のつくりは大きく進歩したといってよいでしょう。
耐震性については、その後阪神淡路大震災や東北大震災、熊本地震と立て続けに大きな地震があり、我々建築士もそれなりに知識や知見を深め、地震に備える建物が設計できるようになったと思います。一応、現行の建築基準法では、昭和54年以降に建てられた建物は合法、最低基準以上の耐震性能があるとしています。

省エネ性についても、地球規模での地球温暖化問題やヒートショック予防、あるいは住宅の長寿命化という観点で、高断熱高気密化がすすんできました。
冬季は全館暖房をし窓に結露することなく、夏は全館冷房をして快適性を飛躍的に良くしただけでなく、光熱費もそれなりに抑えた超高断熱住宅も数%ながら誕生しています。

では肝心かなめの耐候性はどうか?



日本には寒い乾燥した冬があり、梅雨があり、台風があり、もはや熱帯気候と呼べなくもない蒸し暑い夏があり・・・。
生産性、コストパフォーマンスのみを重要視してきたためか、総二階建て、片流れ、軒ゼロなどと、
過去の日本にはなかったデザインの建物があっという間に増えてしまいました。

インスペクションは建物の劣化診断が主たる診察メニューとなります。
屋根や外壁の劣化状況、雨漏りの有無、床や柱の傾きの有無など。
耐震性については前述しましたが、昭和54年以降に建てられたものであれば、それだけでインスペクション上は「問題なし」という評価が与えられます。
省エネ性については、ガイドラインにも診断メニューがなく、評価対象外としています。



何が言いたいと申しますと、
現行インスペクション制度ですと、「劣化」についてだけの診断でその建物を評価している、ということになっており、
中古住宅の購入判断や建物の評価にはなかなかなり得ないのではないか、ということを申し上げたいのです。

インスペクションを行う資格要件は「建築士」です。
建築士は今や、耐震性や省エネ性についても深く知見を深めていると信じています。

中古住宅の購入検討材料として、
正当な評価を住宅につけたいのであれば、
現行規定だけのインスペクションだけではなく、もっと深堀りした調査をすべきだと考えています。

中古物件の流通が盛んな欧米では、インスペクションの結果により売買金額の調整が行われたり、買主から売り主に修繕依頼を正当に主張できるそうです。
そうやってインスペクション結果が活用されるのが当然といえば当然に思えるのですが、
日本のインスペクション制度は今のところまだ、中学3年生のあの頃のわたしのように未成熟なのです。

この記事を書いたプロ

塩原真貴

木造住宅を耐震・断熱構造に生まれ変わらせるプロ

塩原真貴(株式会社Reborn)

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