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ウチだけ?「こんなに寒いとは思わなかった・・・泣」

2021年1月14日

テーマ:リフォーム

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 住宅ローン 借り換え住宅購入 諸費用バリアフリー 工事

寒波の影響でこのところずっと低温の日々が続いた日本列島。
テレワーク拡大の影響なのかもしれませんが、暖房需要で電力がひっ迫しているとの報道がありました。

「新築してまだ数年なんですが、当初聞いていた話と全く違う室内環境(寒い)で困っている」
「室内が全然暖かくならなくて、灯油式のファンヒーターを運転させているが、これって普通?」
「裸足で生活ができるくらいの断熱レベルはどの程度必要か」
「新築したのに寒い。こんなものなのか?」
などのご相談がわたしの元に連日舞い込んでいます。

本来であれば省エネインスペクションとも呼べるであろう現地調査を実施したうえでアドバイス差し上げたいと考えていますが、このような状況下でもあるので、
図面や仕様書をメールを送っていただいたり、電話口で断熱材の種類や厚み、使用している暖房・換気のヒアリングを行いつつ、そのお宅のおおよその現状を把握しながらお話しをさせてもらっています。

身につまされることも多々ありますが、その家を建てた工務店・ハウスメーカー各社の考え方や立場も当然あるので、
「最終的にその会社選んだのあなたですよね」、という結論に達してしまうこともしばしば。
工務店の技術力、考え方、勉強力の差は、2010年頃から日を追うごとに大きくなっていることは否定できません。


友達の家はあったかいのに、なんでウチだけこんなに寒いの?

住宅をつくる過程において、建築主から様々な要望がでてきます。
規模(広さ)、間取り、水廻り設備機器、収納量などなど。
当然予算の制約もありますから、最終的にすべての要望をかなえることは当然ながらできません。

冬寒い・夏暑い家を希望する方はまずいないと思いますが、断熱レベルや燃費性能については優先順位がそれほど高くない場合も当然あるはずで、
ふつうの方は部屋数やデザイン、太陽光発電パネルの設置有無などが「いの一番」になるのではないでしょうか。

住み心地、暖冷房の感じ、空気質などは数値化することはできません。
いや、できるといえばできるのですが、それが快適なのか、どの程度の優先順位をつけるべきなのか判断がつきません。

誤解を恐れずに述べますが、いろいろご意見を聞いてゆくと「あ~、その予算でその断熱仕様なら妥当なんじゃないですかね」という結論になる場合もしばしばです。
まさに”あとの祭り”。
そのおうち、断熱リフォームはもちろん可能ですが、新築時に実施するのに比べて倍近くの費用がかかると思っておいた方がよいかと思います。
計画によってはいったん仮住まいをしなくてはならなくなってしまったり、築後数年のうちに足場をかけての大ががりなリフォームを実施となれば、近所の目もやはり気になります。
築浅でしたら住宅ローンもたっぷり残っているので、結局「我慢をする」という選択をする方が圧倒的に多いかと思われます。

とても残念なことではありますが、これだけ情報化社会になったとはいえ、多種多様な工務店・ハウスメーカーが存在しているので、めぐりあわせやご縁で業者選定によって決めしまっているのが実情です。(それはそれで悪いことではありません)

今後住宅の造り手はまず、自社における断熱性能の標準値や目標値をホームページではっきり表示する必要があります。
わが社も物件ごとに計算し建築主に説明していますが、それがホームページ上で明確に出来ていないので、今後意識を置いて表示して参ります。

それでも踏み出す人もいる!

悩んだ挙句、「でもやっぱりいまこの時点でやる!」と断熱リフォームに踏み切る方も少なからずいらっしゃいます。
この場合、住宅ローンの借り換えが発生する→月当たりの返済額が増える、または返済期間を延ばす、ということになるはずです。
後悔の気持ちは当然あるでしょう。
「でも、あの環境が手に入るのだからお金には代えられない」
そう感じられるほど快適性の差はあると言えます。
いつかやるなら早い方がいいのです。
もちろん社会的にみても地球温暖化対策として、住宅の高断熱化は省エネに直結しますのでかなり有意義なことです。

補助金がつかえないのか?

そう考える人にとって、「長期優良住宅化リフォーム・高度省エネ型」の活用は非常に心強いものがあります。
既存の家を長期優良住宅に化けさせる、BELS(ベルス)という省エネ評価書を取得する、という要件が備わっており、その申請手続きがとても大きな手間と時間を要すため、工務店や建築士はそのハードルを避けたがるフシがありますので、なかなか一般の方の耳には入ってきませんが、最大で現金300万円の補助金を得ることができます。
この300万を活用して、築浅の寒い住宅を、一気に資産価値の高い長期優良住宅にのし上げ、省エネで、冬、家じゅうどこでも20℃の快適空間にすることが叶えば超ラッキーとポジティブに考える人もいるのです。
ここで余談。
市場に出回っている断熱ぺかぺかの建売住宅を購入し、すかさずこの長期優良住宅化リフォームで補助金を得つつ、超高断熱高性能住宅に仕立て上げる、というアラワザもあり得ると考えられなくもない。
一方、思い切ってその寒い家を売却し、もういっかい今度は失敗しないように別の場所に新築しなおす、という手は?
いやはや、やはり余談でした。

考え方はいろいろあろうかと思いますが、一生暮らすという風に考えず、ライフスタイルや年収などに応じて住居を住み替える、なんていう欧米の不動産方式の方が理にかなっているとは思います。残念ながら日本はまだまだですが・・・。

ホテルでもそうですが、全館空調が整った快適な部屋は、それなりに宿泊費高いでしょ。
エアコンガンガンでカラッカラのあの空気。一晩で風邪をひいてしまいそうな部屋はそりゃ安い。
要はそういうことになってしまうんですが、ホテルと住宅はやはり違いますから。

外皮断熱性能Ua=0.3台がめやす

全館暖房、気持ちいい室内環境。
エアコンでも暖房可能。
それを目指すのであれば、長野県内だとこのあたりが天下分け目の関ケ原だと思います。
専門用語なのでちんぷんかんぷんの方は、書店に売っている本でもインターネットでも、この値の意味するところまでは勉強をしないといけません。
でないと、あとの祭り率が高くなります。
そして、新築でもリフォームでも、このUa値に基づいて、その家が冬の間でどのくらいの暖房エネルギーを消費するのかを、根拠を以て示してもらってください。
ここがスタートです。
暖房用の消費エネルギー=金額換算して、納得できればほかにもいろいろ予算を割かなければならないところがあろうかと思うので、そちらに回してOK。
納得できなければ、さらにUaを良くしてください。
ただし数多くの経験から、私はUa=0.3前後が、生涯ランニングコスト試算の面からも、施工性・工事費の面からも、最もコスパがよいと結論付けています。

断熱職人的提言



なにせ日本には資源がありません。そのくせ多くの人が比較的豊かな生活を送っています。
こんなに小さな島国なのに、エネルギーの消費量は世界で第5位なんだそう。
海岸沿いで石炭やガスを燃やして電気をつくり、ロスが莫大ながら送電線で各家庭・事業所へ。
断熱性能の悪い住宅で暖房ガンガン、お風呂好きですからタチが悪い。
Co2を大量排出し、悪い意味で地球の温暖化に大きく貢献しています。

少ないエネルギー消費で、快適に暮らす。

その実現のために、今後の新築住宅はUa=0.3前後の高断熱化はもはやマストで、
10~20年毎に行うべき住宅リフォームも、高断熱化は水廻り機器のグレードアップより優先すべきでしょう。

「地球がおかしい」は、自分自身の暮らしから始まっていることに気づき改めるべきかと思います。
我々建築業界に携わる者たちは、国の定めた省エネ基準(最低値)を順守しているだけでは、世界は、地球はいっこうに変わらない、ということに気付くべきでしょう。

ある意味とんでもないことを書き連ねました。
異論反論も当然ありましょう。
しかし私は日々設計・積算・現場に対峙している実践者。
そこに関わる人や暮らしている人達とも対話や意見交換を重ねてきています。

真冬や真夏に停電が長時間発生する。
海岸沿いが海に浸かる。
台風や竜巻で河川が氾濫する。
地震で建物が倒壊して命を落とす。
雷で家が燃えていないのに有毒ガスで亡くなっている人がいる。
資源や食料の奪い合いで戦争が起こる。

年齢を重ねると、そうしたことに自分が関わっていることに気づいてくるのです。

2021年1月 塩原真貴
今年で48歳になります。年男なのです。

この記事を書いたプロ

塩原真貴

木造住宅を耐震・断熱構造に生まれ変わらせるプロ

塩原真貴(株式会社Reborn)

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