自筆遺言書の作成 少し簡単になりました

鴇田誠治

鴇田誠治

テーマ:遺言書のこと


遺言書でどんなことができるのか 改めて確認しよう

遺言とは、自分が死亡したときに財産をどのように分配するか等について、自己の最終意思を明らかにするものです。

遺言がある場合には、原則として、遺言者(遺言を書いた人)の意思に従った遺産の分配がなされます。

また、相続人以外の「お世話になった人や団体」に一定の財産を与えるという遺言(遺贈といいます)を書けば、相続人以外にも財産を渡すことができます。

そして、遺言書を使って「遺言者の最終意思」を明確に相続人に伝えることで、相続をめぐる紛争を事前に防止することができるというメリットもあります。

このようなメリットの多い制度ですが、日本では諸外国に比べると遺言の作成率が低いといわれています。

そこで、この制度をもっと利用しやすくするために、自筆証書遺言の方式を緩和し、また、法務局における保管制度を設けることになりました。

この改正により、自筆証書遺言は、公正証書遺言の安全性に近づいてきました。

ただし、公正証書遺言にも確かなメリットがありますので、遺言書を作りたい人のニーズに応じて、どちらかを使い分けるのがいいでしょう。

遺言書には二つの作り方がある

遺言書を作るための方式は、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、自分で手書きをすることが可能であれば作成できる手軽で自由度の高い軽易な方式の遺言です。

そして、今回の法改正により、「財産目録」については自ら手書きをしなくてもよくなりました。

また,法務局における保管制度を活用することで、自筆証書遺言が更に利用しやすくなります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人と2人以上の証人が関与することで、本人の意思による作成であること
が担保できる<安心>度の高い遺言です。

また、公証人が遺言書の原本を厳重に保管しますので、改ざんや紛失から遺言を守ることができる<安全>性の高い制度です。

自筆証書遺言で法務局の保管制度を利用しない場合、死亡後に家庭裁判所での検認手続きが必要ですが、公正証書遺言のときも家庭裁判所の検認は不要ですので、スムーズな相続手続きが行えるでしょう。

自筆証書遺言を作るルールはどう変わったの?

自筆証書遺言を作る場合、遺言者(遺言書を書く人)が、

1)遺言書の全文

2)日付及び氏名を自ら書いて、

これに押印をしなければなりませんでした。

ところが、今回の改正により自筆証書によって遺言をする場合でも、例外的に、自筆証書に「相続財産の全部又は一部の目録」(以下「財産目録」といいます。)を添付するときは、その目録については手書きで書かなくてもよいことになりました。

手書きでない財産目録を遺言書に添付する場合には、遺言者は、その財産目録の各ページに署名押印をしなければなりません。

財産目録を付けるのはどんなときですか?

遺言書を書いたときに、「私の財産のすべてを○○に相続させる。」などとした場合には、死亡したときに保有していた財産の全部を渡すのですから、個々の財産を特定する必要はないため、財産目録は不要です。

ところが、多くの遺言書は、

「不動産○○を長男に相続させる。」とか

「預貯金△△を長女に相続させる。」といった記載がなされます。

遺言者が多数の財産について遺贈等をしようとする場合には、

例えば、本文に「別紙財産目録1記載の財産をAに相続させる。」とか、

「別紙財産目録2記載の財産△△をBに相続させる。」と記載して、

別紙として<財産目録1>・<財産目録2>を添付するのが簡単です。

この財産目録について、パソコンで作成して紙に出したり、通帳をコピーするなどして作ることができるようになるため、
手書きの負担が大幅に減ることになります。

財産目録の形式に決まりはありますか?

財産目録の形式については、「署名押印をしなければならない」ことのほかには特別な決まりはありません。

遺言者自身がパソコン等で作成してもよいですし、行政書士などの第三者に作成をお願いすることも可能です。

例えば、土地については登記事項証明書を、預貯金については通帳の写しを添付することもできます。

なお、遺言者の署名押印については、財産の記載が用紙の片面のみにある場合には、その面または裏面の1か所に署名押印をすればよいのですが、財産の記載が両面にある場合には,表裏の両面に、それぞれ署名押印をしなければなりません。

押印する印鑑についても特別な定めはありません。本文で使った印鑑とは異なる印鑑を使用しても構いません。



財産目録は本文にホッチキスなどで綴じるのですか?

財産目録の添付の方法について、特別な決まりはありません。

本文と財産目録とをホッチキス等でとじたり、用紙と用紙の間に印鑑で契印したりする必要もありません。

ただし、遺言書の一体性を明らかにすることをかんがえると、バラバラになっているよりも、一つになっているほうが受け取る側は分かりやすいと考えられます。

なお、今回の改正は、自筆証書遺言書に財産目録を「添付」する場合に関するものです。

本文と財産目録とがそもそもバラバラであることを前提としていますから、

本文が書かれた用紙と同じ用紙内に自書によらない財産の記載をすることはできませんので注意してください。

自書していない財産目録を訂正する方法は?

パソコンなどで作成したため自書していない財産目録の中の記載を訂正する場合であっても、

自書による部分の訂正と同様に、遺言者が、どこを変更したのかその場所を示して、

「ここをコレコレに変更しました」旨を書いて、

これに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければなりません。

少し複雑な訂正方法ですので、下記の例を参考にして下さい。

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鴇田誠治
専門家

鴇田誠治(行政書士)

社会保険労務士・行政書士 ときた事務所

相続・相続対策の専門家として、相続手続きの総合的なご支援はもちろん、争族の対策もお客様と共に立案いたします。また、任意後見、財産管理、家族信託など、お客様が安心できる老後の生活支援もお手伝いします。

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