行方不明者がいる場合の遺産分割
相続放棄をすると、誰が相続するの?
相続放棄をすると、「はじめから相続人ではなかったとみなされる」というご説明をしましたが、簡単にいうと相続人ではなくなりますので、他の相続人が、相続放棄をした人の相続分を取得することになります。
下記の相続関係図(表示した続柄は、長男・長女から見た関係です。)をもとにご説明しますと、仮に長男が相続放棄をすると、相続人は「母」と「長女」となり、「亡父」の相続財産をそれぞれ2分の1ずつ相続します。
それでは、長男に加えて、母と長女も相続放棄をした場合はどうなるのでしょうか。
この答えの前に、基本的な相続の知識を改めて確認しよう
相続には順位があることはお聞きになったことがあると思います。
具体的には、第一順位の相続人は「子(図でいう長男と長女)」、第一順位の相続人がいなければ第二順位の相続人である「亡父の父・母(図でいう祖父と祖母)」が相続人になり、、さらに第二順位の相続人もいない場合には、第三順位の相続人である「亡父の兄弟姉妹(図でいうおじやおば)」が相続人になります。配偶者は順位に関係なく相続人になります。
このことを踏まえて先の相続放棄の問題の答えは・・・?
長男も母も長女も相続放棄をした場合、亡父の配偶者に加えて第一順位の相続人がすべていなくなりますので、相続する権利は第二順位の祖父・祖母に移動します。
ここで、祖父・祖母も亡父よりも前にすでに他界している場合には、第三順位のおじさん・おばさんに相続権が移ることになります。
このように相続人の地位は、順に移っていきます。
借金があるからといって、気軽に相続放棄を選択すると、思わぬ人に迷惑をかけてしまうかもしれませんので、この点はお気を付け下さい。
相続放棄ができる期間にも注意しよう
なお、相続放棄ができる期間(熟慮期間)は「相続の開始のあったことを知った時から3ヶ月以内」ですが、上記のようなケースで、相続人の地位が順に移り変わっていった場合はどうなるでしょうか。
この場合、仮に亡父が亡くなったことを知っていたとしても、亡父の配偶者や子供たちが相続放棄をしなければ第二・第三順位の相続人は相続人ではありません。したがって、「相続の開始があったことを知ったとき」は、先順位の相続人が相続放棄をして「自分が相続人となったことを知ったとき」からとなり、亡父が亡くなってから3ヶ月以上が経過していても相続放棄の手続きをすることはできます。自分が相続人になったと分かりましたら、できるだけ早めに相続するか相続放棄をするかを検討して手続きを進めてください。