社内のコミュニケーション不足が引き起こす問題とは
社員にはもっと仕事をがんばってもらいたいけれど、仕事への情熱やモチベーションがいまいち…というお悩みを抱えている経営者の方は少なくないでしょう。
このコラムでは、昨今注目を集めている「従業員エンゲージメント」の概念についてご紹介すると共に、スタッフのやる気を引き出す方法についてお話しします。
従業員エンゲージメントとは
「従業員エンゲージメント」という言葉をご存じでしょうか?
従業員エンゲージメントとは、従業員が企業の掲げる目標やビジョンを理解し、自発的に企業に貢献しようとするモチベーションのことをいいます。
この概念は、社員が企業に対して抱く「愛着」や「きずな」ともいえるもので、誰かに指示されるわけでもなく、自然とそういった気持ちが湧きあがってくる状態を指しています。
日本では、従業員エンゲージメントという言葉がほとんど浸透しておらず、実際に従業員エンゲージメントの高い人材が他国に比べて圧倒的に少ないのが現状です。
アメリカのギャラップ社によると、日本で従業員エンゲージメント(熱意・やる気)の高い社員の割合はたったの6%にとどまっていることが報告されています(139カ国中132位)。
社員のやる気がでない理由
私たちの国で、「従業員エンゲージメントが低い(=やる気や熱意がない)」ことが、企業で常態化している原因はいったい何なのでしょうか。
日経新聞がギャラップ社のCEOであるジム・クリフトン会長兼最高経営責任者にインタビューした記事によると、「不満をまき散らしている無気力な社員」の割合が24%と、高い割合を占めていることが主な原因だといいます。
さらにこれらの社員は、製品の欠陥・事故・顧客離れの問題にかかわっている中心人物であるといい、企業に大きな損害を与える存在だと指摘しています。
会社に対する不満を極力減らし、社員が働きやすさや働きがいが感じられる職場環境を構築し、不満を口にするような社員を減らしていくことが、事業継続や企業の成長にとって何よりも大切なことなのです。
社員のやる気を引き出すことのメリット
さて、従業員エンゲージメントの高い社員を増やしていくことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。主には以下のようなメリットが挙げられます。
【商品やサービス品質が向上し、収益がUPする】
従業員エンゲージメントの高い社員が増えていくと、社内に心地よい活気が生まれてきます。
企業や組織のために、そして顧客のためにできることを自発的に考えるため、商品やサービスの品質が向上していきます。最終的には売上拡大にもつながっていきます。
従業員エンゲージメントの高い企業は、低い会社に比べて12%も収益性が高いとの調査結果もあります。
【社員の定着率がUPする】
従業員エンゲージメントが高まると、社員の定着率がUPします(=離職率が低下する)。従業員エンゲージメントが高いスタッフは、低いスタッフと比べて離職率が90%近く低いとの調査結果があります。
離職率が高い企業では、採用コストが余分にかかってしまう分、収益性にも大きなダメージを与えてしまうため、その分収益性は低下していくでしょう。
効果的な従業員の満足度を上げる方法
それでは最後に、従業員エンゲージメントを高める方法をご紹介したいと思います。
【上司が部下の強みを理解したうえで適した仕事を与える】
ギャラップ社のCEOジム・クリフトン氏によると、無気力な社員を生んでしまう主な原因は、自分に合っていない仕事を任されていることにあるといいます。
上司が部下と共にキャリアビジョンを共有し、どのようにステップアップしていくのかを真剣に考えることが大切です。自分の強みを生かした仕事の方が、成果があがりやすいですし、モチベーションも維持できるでしょう。
【ワークライフバランスを向上させる】
残業にまみれて、心に余裕がなくなってしまうと、本来楽しめるはずのプライベートまで気持ちが沈んでしまい、ONとOFFの切り替えができなくなります。
そうなると、前向きな気持ちで仕事に向き合うことが難しくなってしまいます。社員一人ひとりがしっかりONとOFFの切り替えができるよう、残業を減らしたり、就業時間をしっかりと管理したりすることが大切です。
【公平で適正な評価制度の構築】
人間、誰しもがもつ「承認欲求」をきちんと満たしてあげることも大切です。
上司に気に入られているスタッフだけが昇進・昇給していくのではなく、一人ひとりの社員のがんばりをしっかりと認め、公平かつ適正な評価制度の構築を行うようにしましょう。
もちろん、直接ほめたり、表彰したりするなど、日頃からのケアも大切です。企業の適切な評価は、従業員エンゲージメントを高めるのに非常に効果的ですので、丁寧に取り組んでいきましょう。