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築50年近くの空き家を宿泊施設へ|灯ゲストハウス石巻の立ち上げ事例

伊藤友佑

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空き家の活用方法として、賃貸住宅や店舗、事務所などを思い浮かべる方は多いと思います。

近年は、空き家を民泊やゲストハウスなどの宿泊施設として活用する事例も増えています。しかし、古い住宅を改修して予約サイトへ掲載すれば、すぐに宿泊施設として営業できるわけではありません。

建物の状態、立地、法令、消防設備、運営体制、収支計画など、事前に確認すべき項目が数多くあります。

株式会社Blue Keyでは、所有者から貸与を受けた築50年近くの空き家を活用し、宿泊施設として整備したうえで、2026年7月1日に「灯ゲストハウス石巻」の営業を開始しました。

今回は、この取り組みを通じて分かった、空き家を宿泊施設として活用する際の考え方をご紹介します。

空き家を買い取るのではなく、借り受けて活用



灯ゲストハウス石巻で活用している建物は、弊社が購入した物件ではありません。

所有者から空き家を借り受け、弊社が宿泊施設として整備・運営する形を採用しています。

空き家の所有者にとって、使用していない建物を保有し続ける場合でも、固定資産税や庭木の手入れ、清掃、修繕、防犯対策などの負担が発生します。

一方で、活用する側が建物を使用し、日常的な管理や保守を行うことで、所有者の管理負担を軽減できる可能性があります。

空き家活用というと、所有者が多額の費用をかけてリフォームし、賃貸経営を始める方法が一般的に考えられます。しかし、活用する事業者へ建物を貸し出す方法も選択肢の一つです。

ただし、貸し出す場合でも、口約束だけで進めるべきではありません。

少なくとも、次の点を事前に明確にする必要があります。

* 契約期間
* 改修費や修繕費の負担
* 建物や設備の所有関係
* 固定資産税や保険料の負担
* 契約終了時の原状回復
* 営業許可や運営の名義
* 事故や近隣トラブルが発生した場合の責任
* 売却や相続が発生した場合の取り扱い

所有者と活用事業者の認識が異なると、事業開始後に大きなトラブルへ発展する可能性があります。

なぜ宿泊施設として活用したのか



空き家の活用方法は、建物の状態だけで決めるものではありません。

その地域にどのような需要があるのかを考える必要があります。

石巻市内には、観光、仕事、イベント、帰省、知人訪問など、さまざまな目的で訪れる方がいます。

一方で、宿泊人数や滞在目的によっては、一般的なホテル以外の選択肢を求める方もいます。

灯ゲストハウス石巻では、豪華な宿泊体験を提供するのではなく、気軽に利用できる価格帯と、複数人でも宿泊しやすい環境を整えることを重視しました。

既存の住宅を活用するため、新築のホテルとは異なり、建物の構造や間取りに制約があります。

その制約を無理に消そうとするのではなく、既存建物の特徴を生かしながら、宿泊者にとって必要な安全性、清潔さ、利便性を整える方針としました。

最初に確認したのは、改修内容ではなく許認可



空き家を宿泊施設へ転用する際、先に内装デザインや設備を決めてしまうのは危険です。

宿泊料を受け取って人を宿泊させる場合、原則として旅館業法上の許可、住宅宿泊事業法上の届出、特区民泊の認定のいずれかが必要です。旅館業には、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の3種類があります。

灯ゲストハウス石巻では、旅館業法上の簡易宿所営業として許可を取得しました。

許可を取得するためには、旅館業法だけを確認すればよいわけではありません。

物件や計画によっては、次のような確認が必要です。

* 用途地域や都市計画上の制限
* 建築基準法上の取り扱い
* 消防設備の基準
* 客室や共用部分の面積
* 換気、採光、衛生設備
* 避難経路
* 近隣施設との位置関係
* 自治体独自の条例や運用基準

具体的な許可条件は、都道府県や保健所設置市などによって異なる場合があります。そのため、厚生労働省も、実際の手続きについては管轄する保健所へ確認するよう案内しています。

改修工事を始めてから基準を満たしていないことが分かると、追加工事や設計変更が必要になります。

そのため、物件を契約したり、多額の改修費をかけたりする前に、保健所、消防、建築関係部署などへ相談することが重要です。

古い住宅だからこそ、必要な改修を見極める



築年数の古い空き家を活用する場合、すべてを新品に交換すればよいというものではありません。

改修費をかけすぎると、事業として採算が合わなくなるためです。

一方で、宿泊者の安全や衛生に関わる部分は、費用を削るべきではありません。

灯ゲストハウス石巻では、既存建物を生かしながら、営業に必要な設備や宿泊者が安心して利用できる環境を整えました。

空き家を事業利用する際は、改修項目を大きく次の3つに分けて考える必要があります。

1.許認可上、必ず必要な工事



消防設備、避難経路、衛生設備など、許可を取得するために必要となるものです。

2.安全性と運営に必要な工事



鍵、防犯、照明、給排水、電気設備など、宿泊者の安全と日常運営に関わるものです。

3.見栄えや快適性を高める工事



内装、家具、装飾、外構など、施設の印象や宿泊満足度を高めるものです。

この順番を間違えると、見た目には多額の費用をかけたものの、営業許可に必要な設備が不足するという事態になりかねません。

無人運営でも「何もしなくてよい」わけではない



灯ゲストハウス石巻では、現地にスタッフが常駐しない運営方法を採用しています。

カメラや通信設備などを利用して本人確認や施設への出入りを確認し、鍵の受け渡しについても、現地に常駐しなくても対応できる体制を整えています。

現在の旅館業の運用では、一定の要件を満たしたICT設備を利用し、本人確認、出入りの確認、鍵の受け渡し、緊急時対応などを行う仕組みが示されています。

ただし、「無人運営」は「管理者が何もしない運営」ではありません。

実際には、次のような業務が発生します。

* 予約の管理
* 宿泊者情報の確認
* 問い合わせへの対応
* 清掃とリネン交換
* 消耗品の補充
* 鍵や設備のトラブル対応
* 騒音や近隣トラブルへの対応
* 緊急時の駆けつけ
* 予約サイトの更新
* 料金や在庫の調整
* 口コミへの対応

現地にスタッフを常駐させないことで人件費を抑えることはできますが、運営責任までなくなるわけではありません。

少ない人的リソースで運営するためには、予約、清掃、本人確認、鍵、問い合わせ対応などの業務を事前に仕組み化する必要があります。

空き家を宿泊施設にすれば必ず収益が出るわけではない



空き家を宿泊施設へ転用する際は、改修できるかどうかだけでなく、継続的に収益が出るかを検討しなければなりません。

少なくとも、次の費用を見込む必要があります。

* 改修工事費
* 家具、家電、寝具などの購入費
* 消防設備や許認可に関する費用
* 光熱費
* 通信費
* 清掃費
* 消耗品費
* 火災保険や施設賠償責任保険
* 予約サイトの手数料
* 修繕費
* 広告宣伝費

売上についても、最大宿泊人数だけで計算するのではなく、閑散期を含めた年間稼働率と実際の宿泊単価を想定する必要があります。

特に地方の宿泊施設では、繁忙期と閑散期の差が大きくなる場合があります。

「近隣に競合が少ないから利用される」とは限りません。競合が少ない理由が、単に宿泊需要が少ないためという可能性もあります。

宿泊施設として活用する前に、周辺施設の料金、予約状況、観光客数、ビジネス需要、交通利便性などを調査することが必要です。

所有者と運営者の双方にメリットがある形を考える



空き家活用を継続するためには、所有者だけ、または運営者だけが利益を得る形では長続きしません。

所有者にとっては、空き家の管理負担が軽減され、建物が地域で再び使われるというメリットがあります。

運営者にとっては、新たに土地や建物を取得する場合と比較して、初期投資を抑えながら事業を始められる可能性があります。

ただし、改修費や修繕費の負担が大きすぎれば、無償で建物を借りられたとしても採算が合いません。

無償貸与だから必ず有利なのではなく、建物の状態と事業性を確認したうえで判断する必要があります。

すべての空き家が宿泊施設に向いているわけではない



空き家を宿泊施設として活用できる可能性があるのは、次のような物件です。

* 観光、仕事、帰省などの宿泊需要がある
* 車や公共交通で利用しやすい
* 消防や建築上の基準を満たせる
* 改修費が想定売上に対して過大ではない
* 騒音やごみなどの近隣対策ができる
* 清掃や緊急対応の体制を構築できる
* 所有者と長期間の利用条件を整理できる

反対に、建物の劣化が著しい、許認可上の問題がある、改修費を回収できる需要がないといった場合は、宿泊施設以外の方法を検討すべきです。

売却、住宅いった場合は、宿泊施設以賃貸、店舗利用、駐車場、解体などと比較し、最も現実的な方法を選ぶことが重要です。

まとめ



灯ゲストハウス石巻は、所有者から貸与を受けた築50年近くの空き家を活用し、2026年7月1日に営業を開始しました。

この事例を通じて改めて感じたのは、空き家活用は建物のリフォームだけでは成立しないということです。

許認可、消防設備、契約関係、改修費、集客、清掃、本人確認、緊急時対応などを含め、事業全体を設計する必要があります。

株式会社Blue Keyでは、不動産会社として空き家の売却や賃貸を扱うだけでなく、実際に空き家を宿泊施設として整備・運営しています。

そのため、机上の活用案だけではなく、許認可や改修、集客、日常運営までを含めた現実的な検討が可能です。

「空き家を売却するべきか、活用するべきか迷っている」
「費用をかけて改修しても採算が合うのか知りたい」
「所有している空き家を事業者に使ってもらいたい」

このような場合は、最初から宿泊施設に決めるのではなく、物件の状態と地域需要を確認し、複数の選択肢を比較することが大切です。

※本コラムは、弊社の空き家活用事例と一般的な制度を紹介するものです。旅館業、建築、消防、都市計画などの基準は、物件の所在地や構造、運営方法によって異なります。具体的な計画については、管轄する保健所、消防署、自治体の建築関係部署などへ事前にご確認ください。

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伊藤友佑
専門家

伊藤友佑(不動産業)

株式会社Blue Key

空き家や相続不動産の相談窓口として、売却や賃貸、活用など幅広い選択肢を提案。大手企業での実務経験や商工会議所での創業支援経験を生かし、地域の専門家と連携しながら依頼者を多角的にサポートします。

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