年金制度は、万一の時にあなたを守ります。
平成29年9月、『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱』にて、年次有給休暇(以下、有休)5日の取得義務化が答申されました。
法案が成立すれば、会社は年休が10日以上付与される労働者に対し、あらかじめ時季を指定して年5日分の年休を与える必要があります。
今回は、人材不足が問題視されている介護業界における、年休取得率向上に向けた対策を考えていきましょう。
介護事業所の有休取得の現状
平成28年度の介護労働実態調査の結果では、労働条件等の不満要因として、34.9%が『有休が取りにくい』、25.7%が『休憩が取りにくい』と回答しています。
また、有休が取りにくい理由としては、『人材不足で取りにくい』が最も多く、次いで『仕事量が多くて取りにくい』、『周囲に迷惑をかけるので取りにくい』と続いています。
これらの理由からもわかるように、人員不足による業務量の多さが、有休取得を言い出しづらい雰囲気に繋がっているのでしょう。
これを打破するためには、リーダーや先輩スタッフが率先して有休を取得できるような環境を作ることが必要なのです。
ただでさえ、介護業界の賃金は他の業界よりも低いことが問題視されています。
その上、休暇も満足に取れないようでは、労働者の介護業界離れをより加速させてしまう要因になりかねません。
また、普段有休を全く取れていない事業所の場合では、退職時に有休残日数をまとめて消化するケースが多いようです。
しかし、仮に後任者の採用が決まっていない状況で、2~3人がまとめて有休残日数を消化する形で退職すれば、現場はお手上げ状態になってしまうでしょう。
とはいえ、事業所内での有休取得のルールを決めないまま有休取得の促進をしてしまうと、“当日の急な申請”や“同じ日に複数のスタッフが休暇を取る”など、業務に支障をきたすことになりかねません。
このような状況に陥らないためにも、事業所側がリードして有休を取りやすい環境を整えることが重要です。
取得計画を作成することで
有休取得が円滑に!?
有休を効率よく取得させる方法として考えられるのが『計画的付与制度』を活用することです。
計画的付与制度とは、従業員本人が保有する年休のうち、5日間を除いた残りの有休日数を、あらかじめ計画した日に取得させる制度です。
たとえば、夏期休暇や年末年始休暇の前後に計画的付与日を設定することにより、連続した長期休暇を取得することが可能になります。
さらに、事業所全体で休むことが難しい場合は、グループ別に計画的付与を設定することも可能です。
ただし、計画的付与制度を活用するには、労使協定を締結する必要があります。
また、従業員が自由に日にちを指定できる年休日数を確保するため、5日間分は計画的付与に含んではいけないとされています。
なお、計画的付与の場合、事業所が設定した日・期間に年休を取得するため、本人の自由な意思に基づく取得はできません。
そのような場合に有効なのが、スタッフ本人に上限日数を決めて有休取得計画を提出させることです。
たとえば半年以内に5日間の有給取得をするよう計画書を作成させ、管理者に提出しておくと、1年間で10日間は事前にシフトに組み込んでおくことができます。
こうすることで、急な有休申請で困惑することがなく、さらに従業員も気兼ねなく有休を取得することができるのです。
介護業界は、今後ますます人材の確保と定着が重要な課題となります。
まずは不満の要因となっている有休を効率よく取得出来るよう整備して、従業員のモチベーションアップに繋げてみてはいかがでしょうか。