相手の関心に関心をもつ姿勢
アドラーベースのコミュニケーションをお伝えしていると、
「相手を否定するのは良くないんですね」
と、受け取られることがよくあります。
広い意味では、そうなんですが、厳密に言うと、そうではない。
例えば、部下が上司に何かを提案してきた時に、
「それはダメだ」
と、真っ向から否定するのは確かに良くないでしょう。
では、次のような返しはどうでしょう?
1.「そうか、それはいいね。でも、こっちの方法のほうが確実に結果が出るよ」
2.「へぇー、そうなんだ。やってみれば?」
3.「本当にそれで結果を出せるんだな?絶対に失敗するなよ!やるからには失敗は許さないぞ!」
4.「どうぞ。俺は知らないから」
どうですか?
1から4、どれも上司としては否定したつもりはありません。
でも、
1.は、結局上司の考えを押し付けていますし、
2.は、無関心
3.は、脅し
4.は、無責任
な印象ですよね。
なので、「否定しない」だけでは、あまりイイ対応とは言えません。
ここまで読んで、当たり前だと感じる人もいれば、まったく理解できない人もいます。
これが、価値観の違いです。
人は、経験したことに基づいて価値観が構築されます。
自分の価値観に合うことには、「そうだよねー」と共感したり、承認したりしますが、
自分の価値観に合わないのとには、「そらはおかしいだろ」と否定したり、拒否したりします。
なので、どんなコミュニケーションスキルも、自分の価値観をもったままでは、変化や改善につながりにくい。
普段から1.をやっている人にとって、「否定しない」という教えは、
「ちゃんとやってるよ。否定しちゃいけないよね」
という、自分ができていることの確認にしかならない。
「否定しない」という言葉の中に、
部下の自主性を伸ばす、とか
チーム力を上げる、とか
相手を尊重する、とか
いろんな要素が含まれている。
そのことに気づくためには、一度自分の価値観を傍に置いて、フラットな目線で吸収しないといけない。
その「自分の価値観を一度傍に置く」がなかなか難しい。