記憶の抽象化
私は基本的に自分のスクールを持っていないので、
法人さんや団体さんからの依頼を受けて、セミナーや研修に登壇させていただいています。
以前は介護事業塾を何度か主催していましたし、今でもたまにオンラインセミナーを企画したりしますが、
基本的にはご依頼がメインです。
そのスタイルで講師をしていて特徴的なのは、依頼主と受講者の温度差です。
法人の責任者さんや団体の担当者さんは、所属するスタッフさんや事業者さんにとって必要と思ってご依頼いただきますが、
実際に受講するのは社員さん、職員さん。
責任者には必要と感じても、現場の皆さんにとっては、そうではないですし、
なんなら「貴重な仕事の時間を奪いやがって」というくらい痛い視線を送られることさえあります。
そんな空気をものともせず、ひたすら自身の世界観を展開する講師もいらっしゃれば、
「らしさ」を発揮できずに重い空気に押し潰される講師もいらっしゃったりします。
私が常に意識しているのは、研修に前向きな方も、敵意むき出しの方も、
それぞれが何かを感じて、ご自身なりのビフォーアフターの変化があること。
それが一回きりの講座でも、年間とおしてのプログラムでも、ビフォーとアフターに変化があること。
研修を受けて人格や人生が変わることなんてないですし、100人が100人ともに同じ変化が起こるなんてこともありません。
なので、ご依頼を受けたら、担当者さんからできる限りヒアリングして、受講者さんそれぞれのビフォーアフターを描きます。
もちろん、必ずその通りになるわけではないですが、その作業をするとしないとでは、全然結果が違います。
先日、ある人からメッセージをもらいました。
数年前に、ある法人さんで研修をさせていただいた時に受講していただいた方。
すでにその法人を退職されて、別の会社でお仕事をされているそうで、
当時まさに、敵意むき出しで受講していた方でした。
私の話をすべて理解したわけではないけど、「やってみてもいいかな」と思うところはあり、それだけは意識して仕事をしてきたそうです。
そんな彼は、当時「一匹狼」のように、周りと距離をとり仕事をしていたそうですが、
今ではチームの責任者として、「調和」を意識していると。
当時の研修資料を今でも見返していて、感謝しているとのメッセージでした。
長年講師をしていて、講義後すぐや講義中に変化を実感してもらえるのもうれしいんですが、
何年も経ってから、このような言葉をいただけるのは、めちゃくちゃうれしい。
当時の研修準備用の資料を見返してみると、そのスタッフさんのビフォーアフターイメージもちゃんと書いてあり、
「時限爆弾のように、しばらく経ってから実感する」
とありました。
表現はともかく、描いたとおりになっている。
よし!次の研修もしっかり準備しよ