法律上の競売取り下げ時期
先日、こんな方が当社へ相談に来られました。
知人から裁判に訴えられ敗訴、300万円の損害賠償を請求されることとなり、支払いができずにいたところ、自宅が競売にかけられ、なんとか競売を回避できないものかという内容の相談でした。
自宅の登記簿謄本を確認したところ、住宅ローンがまだ残っており、1500万円程の残債務がありました。
また、自宅の相場は、1,000~1,200万円程。
仮に、このまま競売になったとしても、競売の申し立て権者には明らかに一銭のお金も受け取ることができません。また競売で安く落札されてしまえば、優先して配当を受けることのできる抵当権者(住宅ローンをつけている銀行)に不利益を生じさせてしまう恐れもあります。
このような無意味な競売の申し立てが果たして本当にまかり通ってしまうのか・・・。
答えは、競売は取り下げられます。
上記であげたように、無意味な競売を裁判所は認めません。
ですので、数か月経てば、債務者の方の自宅に「競売を取り下げました」(無余剰取り消し決定)という内容の手紙が裁判所から送られてきます。
一方、競売の申し立てをした債権者にも、裁判所は「競売を取り下げます」という内容の手紙を通知します。
しかし、そこにはこんなことも記載されています。
競売を進める為の要件です。
1.保証金の提供
裁判所から送られてくる通知書に金額が記載されているのですが、その金額以上で買受人が現れなかった場合は、自分で買い取ることを書面にし、その額を保証提供するということです。
2.余剰(配当)を受け取ることがでることを証明できる場合
例えば、自分よりも優先順位にある債権者の債権額が返済などによってすでになくなっており、余剰が生じる見込みがあることを証明できる場合です。
3.優先債権者に競売にかけることの同意を得ている場合
自分よりも優先して配当を受け取ることのできる債権者が、競売の申し立てをすることに同意をしている場合です。
これらを証明する資料を1週間以内に裁判所に提出することができれば、債権者は競売を進めることができるようになります。
ですが、これらの要件を満たせることはほとんどありません、上記に示すようなご相談者のケースではまず間違いなく競売は取り下げられるでしょう。
ところで、配当を受け取ることができないことが分りながらも、なぜ今回もそうですが、抵当権者よりも順位が劣る債権者は競売の申し立てをするのでしょう・・・。
ましてや、競売の申し立てにも80万円近いお金がかかるにもかかわらず・・・。
実は、これは人の心理的なものが関係しているそうなのです。
突然、裁判所から競売を知らせる手紙が届けば誰でもびっくりします。
たとえ届くことが事前に知らされていてもその封筒をみると不安は増長します。
そうすると、なんとか今の状態を回避しようと、親戚や知人、さらには他から借り入れなどする方も少なくなく、債権者はそういった人の心理を利用して回収を試みる場合もあるようです。
また、こういった無意味の競売申し立ては、金融機関よりも、一般の個人の方が債権者となっている場合に多く見受けられます。
個人間でのお金のトラブルには、必ず人の感情が深く関係しています。
金銭的メリットよりも感情的な要素で競売を申し立てるということなのかもしれません。
いずれにしても、無余剰となるような後順位者による競売の申し立てというのは、最終的には競売は取り下げられるということを知っておいてください。
以上、「無余剰取り消しによる競売取り下げ」のお話しでした。
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