緊張が緩むと人は笑う【プレゼンに笑いをプラスするコツ11】
「プレゼンに笑いをプラスするコツ」シリーズの第13回です。第11回、第12回では、笑いを生み出す法則について紹介しましたが、今回は笑いを生み出すもう1つの法則を紹介します。笑いの法則シリーズは一旦これで最後になります。
「なるほど~」が笑いを生み出す
緊張が緩んだとき、ズレが生じたとき以外に、もう1つ笑いを生み出す法則があります。それは、
・頭の中にあるちょっとしたひっかかり(違和感、疑問など)が解消されると、人は笑う
という法則です。この文章だけを見ても、いまいちわかりにくいですよね。簡単に言うと「なるほど~」、「やっぱりそうか~」と思った時に笑いが生まれるということです。
なぞかけが面白い理由
非常にわかりやすい例を紹介します。日本には「なぞかけ」という芸があります。
「〇〇とかけて、××と解く。そのこころは、どちらも△△です」
という芸ですね。落語家さんが寄席の大喜利で披露することが多いです。少し前にねづっちさんがテレビで大ブームになりました。ねづっちさんのなぞかけには、こんなものがあります。
「ドラムとかけて、悪いことをすると解きます。そのこころは、ばち(バチ、罰)があたるね」
(※ねづっちさんの公式チャンネルの動画から引用しています
ねづっち「謎かけコーナー」)
プロの芸人さんがなぞかけをやると本当に面白いですよね。なぞかけでは、「××と解きます」と言った後に、少し間があります。そこで、お客さんは、「その後どう続くんだろう?」と頭の中でちょっとした疑問を持ちます。そして、「どちらも△△です」というオチのところで疑問があざやかに解消すると笑いが起きます。これが、ちょっとしたひっかかりが解消すると笑いが起きるということです。読者の皆さんも、オチを聞いて笑ったのと同時に「なるほど~」と言ってしまいませんでしたか?「なるほど~」は笑いの大きな源泉です。
スライドの見せ方を少し変えると…
なぞかけが面白い理由はお伝えできたかと思いますが、実際にプレゼンやちょっとした講座の講師をする際に、なぞかけをするわけにはいきませんよね。パワーポイントでグラフや写真を表示する場面も多いかと思います。その時に、ちょっと見せ方を工夫すると、笑いを起こせるかもしれません。実際に自分が笑いと健康の講演会で行っている話を紹介します。
講演会では、人と人とのつながりや、社会参加の重要性をお伝えするために、主観的幸福感のデータを紹介することがあります。幸せの定義は人それぞれで、他人が押し付けるものではありませんが、心理学の研究をするために、客観的にどうかは置いておいて、今自分が実際に幸福に感じているか点数で尋ねることがあり、専門用語で「主観的幸福感」と言います。国立長寿医療研究センターが60歳以上の男女を対象とした研究で、興味深いデータがあったので、講演の際に紹介しています。まずはこちらのグラフをご覧ください。60歳以上の男性の主観的幸福感です。
このグラフを見ると、妻がいる人の方が、妻がいない人より、幸福を感じていることがわかります。(※統計データはあくまで全体としての傾向を示したに過ぎず、全員に当てはまるわけではないことを承知の上でご覧ください)
男性のグラフを見たら、女性のグラフも気になりますよね。ですが、私が講演を行う際には、男女のグラフを並べて同時に見せることはありません。まず、男性のグラフを見てもらった後に、あえて十分なタメを作ります。そして、小声で
「男性のグラフを見たら、女性のグラフは、どんな感じか、気になりませんか?」
と会場に問いかけます。すると、会場が段々ざわざわしてきます。十分なタメの後に、
「女性のグラフは、興味深いことに、こんな感じです」
と言って、こちらのグラフを表示します。
グラフが出ると、いよいよ会場のざわつきが大きくなってきます。そこで
「なんと、女性は旦那さんがいてもいなくても、ほとんど変わらないという結果が出ています」
と言うと、会場に大きな笑いが生まれます。
(※研究結果については、こちらのコラムを引用しています。
No.19 男の幸せ・女の幸せ
グラフは、コラムをもとに、田久が作成したものです)
十分なタメを作ることによって、お客さんが「なんかひっかかるなあ」と感じる状態をあえて作っています。そのひっかかりが一気に解消されることで、笑いが生まれます。グラフを同時に見せてしまうと、「ひっかかり」を作ることができないため、大変興味深いデータにもかかわらず、大きな笑いにはなりません。パワーポイントのグラフの見せ方、話のタイミングをちょっと工夫すると、笑いを生み出すことができます。皆さんもぜひ色々試行錯誤してみてください。
なお、配偶者の有無にかかわらず女性の主観的幸福感に差が出にくいのは、一般的な傾向として、女性の方が住んでいる地域に身近に話せる友達が多いからではないかと考えられます。男性は会社勤めの方が多いため、会社を定年退職した後に、妻以外との人づきあいが希薄になりがちです。男性こそ、できれば定年前から地域の人とのかかわりを意識して趣味の友達を見つけたりすることが重要なのではないかという気づきを教えてくれます。
さて、話は変わりますが、せっかくプレゼンや講座の講師をするなら、経験を重ねるごとに上手になりたいですよね。次回からは、回を重ねるごとに上手になるための振り返りの方法論を紹介したいと思います。
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