「そんなあほな~」は笑いを作る大原則【プレゼンに笑いを生み出すコツ12】

田久朋寛

田久朋寛

テーマ:笑いの法則(笑いあるプレゼン)

サングラスをかけた犬


前回のコラム掲載からしばらく日が経ってしまいました。予定が詰まっていたのが一段落したため、再び「プレゼンに笑いを生み出すコツ」シリーズを掲載します。今回が12回目です。

前回のコラムでは、プレゼンの中にに笑いを生み出すために、緊張をゆるめる時間を設けてみることが良いとお話ししました。今回は別の笑いの法則を紹介します。

ズレがあると人は笑う


人はなぜ笑うのか、学問的にも様々な研究が試みられていますが、実は理論としてはっきりと確立された法則は多くありません。その中で、世界中の学者がこれはほぼ間違いないだろうと同意する法則が1つあります。それは、

・(無意識に)当たり前だと思っている予想や常識、先入観とズレがあると笑う

というものです。

言葉で説明してもいまいちピンと来ないかもしれません。更に文章を書くより、まずは冒頭の写真をご覧いただくのが早いかと思います。写真の犬を見て、思わずクスッと笑いませんでしたか?私たちが無意識に思っている「人間以外がサングラスをするわけがない」という常識からズレているのが笑ってしまった最大の理由です。これがまさしくズレがあると笑うということです。私たちは普段当たり前だと思っている常識や先入観、何の疑念もなくそうなるに違いないという予想に無意識に縛られながら生きています。お話の中で笑いを生み出そうと思ったら、そういった常識や先入観や予想から意図的にズレを生み出すのが一つの方法です。ただ、この方法はいきなりは難しいので、お話だけで人を笑わせることに挑戦する意欲のある方は、何度も試行錯誤しながらコツをつかんでいただければと思います。

落語家の桂枝雀氏は、ズレがあると笑ってしまうことを「そんなあほな~」と表現しました。短い言葉ですが本質を鋭くついています。

音楽プレイヤーを自分で操作するだけで


私も大道芸や講演の中でズレを意図的に生み出す手法をいくつも使っています。その場の雰囲気に合わせて演目や流す音楽を毎回変えたいので、文化ホールのような音響設備の整った場所で講演や大道芸を行う際も、音響さんに音源を渡さず、舞台の上で自分でMP3プレイヤーを操作しています。文化ホールでパフォーマンスする際には、冒頭で、

「それでは音楽に合わせて行ってみたいと思います。ミュージック…」

と言って少し間をおいた後に

「自分でやってまーす」

と言いながら演題の上に置いてあるMP3プレイヤーに向かって歩いて行って自分でプレイヤーのボタンを押すと、それだけでお客さんは結構笑ってくれます。大半のお客さんは文化ホールでは音響操作はプロの音響さんがやっているという先入観を持っています。音響を演者が自分で操作するのは先入観とズレがあるため、笑いが起こります。

ところが、このネタは、準備から片付けまで1人で行う屋外の観光地での大道芸でやってもあまり笑いが起きません。全てのことを1人でやることが当たり前の場所では、音響操作も自分で行うのが当たり前で、何もズレが生じないからです。全く同じネタでも、お客さんが無意識に持つ常識、先入観、予想が違うだけで、面白いか面白くないかが全く変わってくるのです。

オチに合わせてフリを考えるのがコツ


先ほどのMP3プレイヤーのエピソードを見て、そんな単純なことで本当に笑うの?と疑問に思った方もいるかもしれません。実際、何も言わずにMP3プレイヤーを操作しても笑いは起こりませんが、今から音楽がスタートするというフリが効いているため、この程度のことでも笑ってもらえます。笑いを起こすには、実はオチそのものだけでなくフリが非常に大事です。プロのお笑い芸人さんは、ネタを考えるときに、どのように話を振ったらオチが引き立つかについて、細心の注意を払っています。オチだけでなくフリをしっかり考えるのが、お話だけで笑いを生み出すコツです。

次回は、別の笑いの原理を、実際に私がプレゼンの中で行っているお話と一緒に紹介します。

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田久朋寛
専門家

田久朋寛(セミナー講師)

大道芸人たっきゅうさん

大道芸人として13年のキャリアを持つ。老人介護施設や高齢者大学等で、大道芸とレクチャーとヨガをミックスした健康講演会「ユーモアセラピー」を開講。笑いの効果を生かし高齢者の心身の健康をサポートしている。

田久朋寛プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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