「そんなあほな~」は笑いを作る大原則【プレゼンに笑いを生み出すコツ12】
「プレゼンに笑いをプラスするコツ」シリーズの第11回です。今回はまじめなお話を長い時間しなければならない時に、ほっと一息つけるような笑いを入れるためのコツをお話しします。
笑いを入れるというと、話の順番や口調を工夫して、切れ味鋭いオチのあるトークをしなければならないと思う方も多いのではないでしょうか。話にオチをつける方法はまた日を改めて投稿できればと思っていますが、オチを作るのはそう容易いものではありませんし、もし簡単にできるなら、M-1グランプリやR-1ぐらんぷりに挑戦できるかもしれません。実はお笑い芸人のようなオチのあるトークをしなくても、まじめなお話に笑いを入れる意外で簡単な方法があります。その簡単な方法を解説するために、まずは人が笑う原理の1つを紹介します。笑いを入れる方法という結論まで少し遠回りしますが、ちょっとだけお付き合いいただければと思います。
緊張が緩むと人は笑う
人はどんなときに笑うのでしょうか?様々な説があり、学術的に理論が確立した説はそれほど多くはありませんが、1つ有名な原理があります。それは
・緊張が緩むと人は笑う(緊張と緩和)
というものです。「緊張と緩和」という名称で知られています。かの偉大な哲学者のカントがこの説を提唱しており、日本では上方落語界の天才である桂枝雀氏が緊張と緩和をベースとした落語の笑いの分類を考察したことで有名です。
身近な例で言えば、入学試験の合格発表の掲示板で自分の受験番号を見つけたときに、緊張の糸が緩んで笑顔がこぼれてきたといった経験は誰もがお持ちだと思います。会社の重役が社員の前でスピーチをする張りつめた空気の中で、重役が思わず段差に躓いたりひどい言い間違いをして会場に笑いが起こり、かえって緊張が緩んで和やかな空気になったなんてこともあるのではないでしょうか?
あの刑事ドラマにも笑いの法則が潜んでいる
「相棒」という大人気刑事ドラマがあります。私も杉下右京さんが大好きで毎週欠かさずに見ています。相棒をご覧になったことがある方にぜひ思い出していただきたいのですが、凄惨な事件のシリアスなシーンが続いた後に、右京さんが紅茶を入れるシーンや角田課長が「暇か?」と言いながら部屋に入ってくるシーンで思わずほっとして笑顔になってしまったことはありませんか?これが「緊張と緩和」です。
実は、ほとんどのテレビドラマや映画、演劇の中の思わずほっとする場面は、意図的に入れられています。シリアスな場面ばかりだと緊張が続いて途中で疲れてしまいます。あえてほっと緩める場面を入れて少し笑ってもらうことによって、視聴者に最後まで疲れずにお話を見てもらえるようにしています。脚本の世界では、このように緊張を緩めて笑いを起こす場面のことを「コミック・リリーフ」もしくは「コメディ・リリーフ」と言い、話をより魅力的なものにする手法として確立されています。一流の脚本家ともなると、秒単位でコミック・リリーフを入れるタイミングまで計算していると思います。(余談ですが、あくまで私の感覚ですが、相棒の脚本家の中でコミック・リリーフの使い方が特に上手いと思うのは太田愛さんと古沢良太さんです)
笑いを増やすには、緊張続きの空気をあえて緩めてあげればよい
さて、これまでのお話を踏まえ、ようやく今日の結論です。プレゼンやちょっとした講座に笑いを入れるためにできる意外で簡単な方法は
・まじめな話が続いて空気感が固くなってきたら、あえて少し緩めてみる
ことです。
緩めると言っても、もちろん段差でずっこけたり、言い間違えたりするボケを入れたりする必要は全くありません。簡単にできる体操や脳トレ、参加者が実物を触れて周りの人とおしゃべりしながら体験できるネタなどを用意しておいて、参加者が疲れ始めたタイミングで1~2分やってみる、これだけで効果があります。例えば中高年の介護予防について30分お話をしなければならなくなったとしたら、30分めいっぱいまじめなお話をするのではなく、お話を10~15分くらいの2つか3つのパートに区切っておいて、合間に小休憩で気楽に笑えるネタを入れておけばよいのです。まじめなお話で緊張が続いていると、本当にちょっとしたことでもいつも以上に笑ってくれますよ。私も講演を行うときは、大体15分をめどに小ネタを入れています。街にある変なものの写真をスライドでお見せしたり、ネタをばらしてもよい簡単なマジックを皆さんにやってもらっています。小ネタはお話のテーマとちょっとでも関連があればベターだと思います。
緊張を緩めることのもう1つの効果
途中であえて緊張を緩める場面を作ることをおすすめするのにはもう1つ理由があります。それは、
・一度緊張が緩むことで参加者の集中力が回復する
ことです。どんなにいいお話でも、長い時間だと疲れてしまいます。疲れてくると話が頭に入りにくく、気持ちも上の空になってしまいがちです。苦手な科目の授業を受けたり、あまり関心がない研修を受けるなど、お話を聞く立場になった時に誰もが一度は経験していることですが、いざ自分が話す側になると、つい忘れがちです。ですので、こまめに軽く緩める場面を作った方が参加者の集中力が長持ちし、かえって最後までお話を楽しく聞けるようになります。
体操や脳トレなどはインターネットでも調べることができますが、また別の回に私が講演会で実践しているものも紹介したいと思います。
これから講演会や大道芸の出番が続きますので、次回更新は少し遅くなるかもしれません。次回は、今回とは別の笑いの法則についても取り上げてみたいと思います。
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