場の雰囲気を楽しくするために押さえたい3つのポイント【プレゼンに笑いをプラスするコツ2】
「プレゼンに笑いをプラスするコツ」シリーズの第4回です。今回はプレゼンやちょっとした講座をする際に、話し手と参加者のお互いの信頼関係を築くために重要なことを解説します。
「返報性の原理」を用いて信頼関係を構築
多くの人の前でお話をしなくてはならない場面で、話を聞いてくれる参加者の皆さんが熱心に聞いてくれた方が絶対やりやすいですよね。反対にお話を聞く側の視点で見ても、目の前で話をしている人が信頼に足る人物だと思えば、お話をちゃんと聞こうかなと思うものです。話し手と聞き手の相互の信頼関係が大切です。医療分野では、医療者と患者の相互信頼関係のことを「ラ・ポール」と言います。プレゼンや講座を開催する際にも、ラ・ポールを意識した方が良いというのが私の考えです。
では、相互信頼関係を築くにはどうすればよいでしょうか?私がお話やパフォーマンスをする際に用いている心理学の法則があります。それは、
返報性の原理
です。一見難しそうな用語ですが、平たく言えば、自分が相手に何かをすれば、相手も自分に対して同じことをしたくなる傾向があるという心理法則です。さらに細かく分類すると、返報性の原理には次の2つがあります。
自己開示の返報性
好意の返報性
専門用語が出てきましたので、1つずつ説明します。
相手の心を開くには、まず自分が心を開いてみる
1つ目の「自己開示の返報性」は、自分が相手に対して心を開けば、相手も自分に対して心を開いてくれる確率が上がるという心理法則です。特に行政などにお勤めで健康講座などで堅い話をしなくてはならない人にとって、明らかに乗り気でない人がいて嫌だなあと経験されたことのある人も多いかもしれません。相手の心を開きたかったら、まずは自分が心を開いてみる、この順番が非常に大事です。
まじめなお話をする時には、ともすると説教臭くなりがちです。まず自分が心を開いてますよと皆さんにわかってもらうために、ちょっとした失敗談や建前とは違う本音などをあえて入れてみてはいかがでしょうか?私は講演の際に高齢者の皆さんの前で体操の実演をしますが、中には一見なんじゃこりゃと思うようなものもあります(本当はきちんとした効果が期待できる体操です)。お客さんの反応を見て、ちょっと怪訝な表情が見えたら、「実は最初は僕もなんじゃこれ、と思ってました」と正直に打ち明けます。その上で理由をちゃんと説明すると、皆さんが驚くほどちゃんと実践してくれます。ビジネスで大成功している人の講演でも、超高学歴の失敗知らずのエリートの話より、様々な失敗や苦境を乗り越えた人の話の方が感情移入できますよね。本当は隠したいことをあえてオープンにするのは、聞き手の心を開くことにつながるという側面もあるのです。
お笑いマジシャンの方が親近感を持ちやすい理由
マギー司郎さんやナポレオンズさんを思い出してみてください。私も大好きなマジシャンです。日本のマジックは世界的にもレベルが高く、ステージマジックやクロースアップマジックの高い技術を持ち世界的に活躍されている方もたくさんいます。でも、普段あまりマジックを見ない人にとっては、マギー司郎さんのような脱力系のお笑いマジシャンの方が親近感があると感じる人も多いと思います。人気者のお笑いマジシャンは、失敗やインチキをおおっぴらに見せてしまい(※そういう演出です)、すごい技術はないということを最初からお客さんにオープンにしています(※本当はマギー司郎さんもナポレオンズさんもスキルを持った凄い方で、私が論評するなんて本来おこがましいです)。だからこそ、見ている私たちも相手に良い感情を抱くのです。まさにこれが「自己開示の返報性」です。
自分が良いことをすると、相手も自分に良いことをしたくなる
2つ目の「好意の返報性」は、自分が相手に良いことをすると、相手も自分に良いことをしたくなるという心理です。ちょっとした講座を開催する際に、参加者に質問を投げかけたりすることがあると思います。日本人は恥をかくことを嫌い多くの人の前で発言するのを躊躇する傾向がありますので、何か答えてくれるだけで大変勇気のあることです。ですから、そういう場面では、参加者に対して肯定的なフィードバックを積極的に行うと会場の空気が少しずつ変化していきます。質問をしたときに正解に近い答えが出た場合は、「非常に鋭いですね」、とんちんかんな答えでも「その視点は面白いですね。次までにその点も勉強しておきますね」といった具合です。どんなことを言っても肯定的に受け止めてくれるのだと参加者が感じてくれれば、では自分も積極的に参加してお返ししたいと思ってくれるようになります。
大道芸を見るときに、面白い大道芸人のトークに乗せられて気がついたらめちゃくちゃ拍手していたという経験があるかもしれません。面白い大道芸人は、(本人が意識しているかどうかはわかりませんが)、好意の返報性を上手に利用しています。もし大道芸を見る機会があったら、この視点でトークを聞いてみると、新たな発見があるかもしれませんよ。
1つだけ気をつけたいこと
1つだけ心にとめておきたいことがあります。好意だけでなく、実は悪意にも返報性があります。ですので、お話を聞いてくれる人を見下したり、露骨に馬鹿にした態度が出ないように気をつけたいものです。1人1人は、参加者全員の気持ちを代表していると思った方が良いと私は思います。ちょっと笑いを取ろうと思って、1人を馬鹿にして笑いを取った結果、全員の心が離れることも起こり得ます。毒舌で人気の芸能人は高等テクを使っていますので、有名人でもない我々は、そういうやり方は真似しない方が無難です。
次回は、人前でお話をすることに慣れてない人にとって最大の敵である「緊張」について掲載したいと思いますが、その前に1つ番外編をお届けします。
※マジシャンのイラストについては、こちらの著作権フリーの素材を使用しています。
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