従業員を解雇したいとお考えの方へ

将棋の対局で記録される「棋譜」。ファンなら、固唾をのんでその一手一手に注目していることでしょう。
囲碁将棋チャンネルが、タイトル戦の主催者から棋譜情報の独占的利用権を得て、将棋の対局中継番組を配信していたところ、この対局中継番組から得た棋譜情報を利用して再現した棋譜の動画が、youtubeにほぼリアルタイムで配信されていました。
そこで、囲碁将棋チャンネルが、googleに対し、著作権侵害であるとして削除申請をしたところ、動画の配信が停止されました。
これに対し動画配信者は、囲碁将棋チャンネルによるgoogleへの削除申請が不正競争にあたるとして、削除の差止め及び損害賠償請求を行いました。
一審では、棋譜は自由利用が可能であるとして、削除申請が不正競争にあたると判断されました。
そのため、囲碁将棋チャンネルが控訴しました。
将棋のタイトル戦の多くは、日本将棋連盟と新聞社などが主催し、運営費をこれらの主催者が負担しています。
この運営費の一部は、棋譜情報の独占的利用権を囲碁将棋チャンネル等の事業者に設定し,その対価を得ることで調達されています。
棋譜情報の利用権を得た事業者は、これを将棋ファンに有償で提供することで、主催者に支払ったライセンス料を回収します。
将棋の場合、野球場のように何万人の観客を集めて入場料収入を得るということが現実的ではなく、またファンの興味も棋譜の内容に重きが置かれるため、棋譜の利用権によって得る経済的な利益が重要となります。
控訴審では、囲碁将棋チャンネルの番組を見て再現した棋譜の動画配信は、このようなビジネスモデルの成り立ちを阻害するもので、自由競争の範囲を逸脱した不法行為を構成すると認定され、動画配信者は不正競争防止法によって保護されるべき利益を侵害されたとは言えないとして、囲碁将棋チャンネル側の逆転勝訴となりました。
ただし、あくまでも将棋のタイトル戦の成り立ちを揺るがすような動画配信であるという認定を前提とした結論であることには、留意が必要です。
リアルタイムでない棋譜の提供行為であるとか、棋譜利用が有償でない場合などには、また異なる結論となり得ます。
なお、リアルタイム配信でない場合について知財高裁令和7年2月19日判決があります。



