【不正競争】無印良品vsカインズ「収納棚」事件
2000円を払って映画館に入ったけれど、期待して見始めた映画がつまらない。
だけど払った2000円がもったいなくて、なんとなく最後まで見てしまう。
こんな経験は、誰にもあるのではないでしょうか。
途中で映画館を出ようが最後まで見ようが、払った2000円が戻ってくることはないのですが、途中で映画館を出るのはなんとなくもったいなく思えてしまいます。
このような心理傾向は、サンクコスト効果と呼ばれています。
すでに投下してしまった費用を回収しようとして、かえってコストが増大するにもかかわらず、不合理な意思決定をしてしまう心理効果です。
もちろん休日の映画なら、途中から面白くなることに期待するのも楽しみの一つとしてあり得るでしょう。
映画館を出てもっと有効に時間を使おうなどと考えることの方が、余暇の過ごし方として間違っている、そういう考え方も成り立つでしょう。
しかし、新プロジェクトを立ち上げて技術開発をスタートさせたものの、結果を出すのに予想以上の時間がかかり、先行きが見えなくなっている。
こういう場合はどうでしょうか。
もはや休日の映画と同じように考えることはできないでしょう。
期限と進捗状況とを見て、プロジェクトをさらに継続するか終了させるか、客観的に判断すべきです。
こういう場合、プロジェクトを終了させる判断を「失敗」と位置付けるべきでないのは、言うまでもありません。
自社だけでプロジェクトを進めている場合は、勇気のある責任者の判断でプロジェクトを終了させることも可能です。
しかし、他社と共同でプロジェクトを進めている場合は事情が異なります。
そのような共同プロジェクトは、通常、「共同技術開発契約書」を最初に締結してスタートします。
したがって共同プロジェクトは、この共同技術開発契約に縛られます。
ところが、予定どおりの進捗が見通せない場合を想定せずに作られた共同技術開発契約書が珍しくないのです。
目的達成の見込みがない場合、相手方も、自社と同じようにプロジェクトを終了したいと考えてくれれば問題はありません。
しかし、相手方にサンクコスト効果が働くことも、あり得ることです。
相手方が事業を終了させる判断をできないとすると、自社も契約に縛られて契約上の義務を履行せざるを得ず、困ったことになります。
共同技術開発契約書を交わすときには、契約の終了事由について、よく考えておく必要があります。