【宗教法人の管理・運営(8)】 -機関-
○○寺墓地使用契約約款
(目的)
第1条 本約款は、宗教法人○○寺の境内に所在する墓地(以下「○○寺墓地」という。)が、○○寺の宗教施設の一つとして適切に使用及び管理されることを目的として、必要な事項を定める。
(墓地の性質)
第2条 ○○寺墓地は、○○寺の檀信徒のための墓地として供される。
2 ○○寺墓地の管理者は,宗教法人○○寺の代表役員とする。
契約の目的
それがどんな取引の約款なのかは、約款の内容を変更できる範囲や、合意したとみなされる内容に関係してきます。
それ以外に、契約を解除する場面でも取引の性質が問題になることがあります。
これは、2020年4月1日施行の民法の改正と関係しています。
たとえば、「債務者の責に帰することができない事由」によって債務の履行ができない場合、改正前は解除できませんでした。
しかし、改正民法によって、そのような制限はなくなりました。
解除は契約を履行しない当事者への制裁であるという考え方から、契約を維持することが不当な場合に、契約から解放する制度であるという考えかたに変わったということです。
そして、契約を維持することが不当かどうかの判断をするのに、取引の性質が問題になります。
ですから、これはこういう性質の取引を行う契約であるというのを、はっきり書いておく必要があります。
寺院境内型墓地
墓地の形態
どんな取引における約款なのかに関しては、墓地の性質の違いを明確にする必要があります。
一般的に、お寺の中にある墓地を「寺院境内型墓地」と呼んでいます。
また、「○○霊園」と呼ばれている墓地は、「事業型墓地」と言われます。
それ以外に、「公営型墓地」というのもあります。
それぞれ墓地の性質は違いますから、寺院境内型墓地であれば、そのような墓地であることを約款で明確にしておくべきでしょう。
寺院境内型墓地
寺院境内型墓地の特徴として、基本的に墓地を寺院が所有している点が挙げられます。
墓地を使用したい人は、寺院と墓地使用契約を結び、墓地の一画を使用します。
墓地は基本的に寺院の宗教施設という性格を持ちますから、ほとんどの場合、寺院の檀信徒であることが墓地使用の条件になります。
事業型墓地だと宗旨は問わないのが通常ですから、そうではないということをまず書いておくということです。
この約款では、寺院の宗教施設として適切に管理・使用するのが約款の目的であることを明らかにしています。
また、寺院の檀信徒に提供される墓地であり、寺院の代表役員が管理者であると定めています。
なお、墓地の経営者である寺院は、管理者を定めて墓地所在地の市町村長に届出ることになっています(墓埋法12条)。
このような性質の墓地では、納骨の典礼を寺院の形式に則って行うってことが前提になります。
約款で課される使用者の義務が妥当かどうかは、寺院の宗教施設であるという性質から検討されることになるでしょう。
そうすると、高額な使用料を徴収するような約款変更は認められない可能性もあります。