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賃料を増額したい。

拾井央雄

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テーマ:寺院の管理・運営

遺言

質問

もう何十年も変わらない家賃で家を貸しています。
そろそろ家賃を値上げしたいと考えています。
しかし,借主がかんたんに応じるとは考えられません。
何か方法はありませんか。

回答

賃料を値上げするための手続き

家賃を値上げしたいのであれば、家主さんと入居者さんとが話し合いをして、合意ができれば値上げできます。

話合っても入居者さんが納得してくれなければ、不動産の所在地を管轄する簡易裁判所に調停を申し立てることになります。
賃料の増減額請求については、いきなり訴訟を起こすことができません(民事調停法24条の2)。
裁判所を使う場合でも、まずは話し合いをしましょうということです。

調停では、まず家主さんの増額請求が妥当なものかどうかが重要です。
話し合いとは言え、不当な値上げ要求に裁判所が力を貸してくれることはありません。

賃料の値上げは、税金などの負担の増加、不動産の価格の上昇、近隣の賃料との比較によって、現在の賃料が安すぎると言える場合に請求できます(借地借家法32条)。
増額請求が妥当かどうかは、そういう場合にあたるか、あたるとして、値上げ幅が大きすぎないか、という観点から考えることになります。
ですから、不動産鑑定士さんのように、不動産の評価に詳しい人が調停委員に選ばれることがあります。

どうしても合意できない場合は、不動産鑑定を実施することもあります。
しかし、それには費用もかかりますし、最終的に合意できなければ賃料額を決める訴訟を起こさなければなりません。
そうなると時間もコストもかかってきますので、大家さんとしても損得勘定が必要です。
裁判をしても、大家さんの言い分がそのまま認められるとは限りません。

合意できるまでの賃料は

新しい賃料の合意ができるまで、賃料はいくらということになるのでしょう。
入居者さんが値上げ前の賃料しか払わなかったらどうなるのでしょうか。

賃料は、家主さんが請求したときから値上げされたことになります。
しかし、合意もなく裁判所の判決もない状態では、値上げ金額が決まりません。
そこで入居者さんとしては、値上げする前の賃料をそのまま払い続ければよいということになっています(借地借家法32条2項)。

それで賃貸借契約を解除されることはありません。
大家さんが受け取ってくれなければ、法務局に供託することになります。

一方、大家さんが従前の賃料を漫然と受け取っていたら、後の訴訟で増額請求を撤回したと認定される材料になりかねません。
入居者さんに対し、賃料の一部として受け取るという意思を明らかにして受け取る方がいいでしょう。
この意思の明示は、後に証拠として使えるようにしておく必要があります。

判決で金額が決まった場合は、足りない額が出てきますが、これに年10%の利息をつけて支払わなければなりません(同項)。
調停で合意する場合は、不足額の扱いを含めて合意することになります。

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拾井央雄
専門家

拾井央雄(弁護士)

京都北山特許法律事務所

エンジニア15年〜弁理士5年と弁護士としては異例の経歴を持ち、技術系分野に精通。知的財産や技術系法務のエキスパートとして数多くの事業者を支援。また自身が住職である立場から宗教法人のサポートも手掛ける。

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