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2つの最高裁判決から労働時間と賃金を考えてみました

川浪宏

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テーマ:労務管理

給特法
昨日は最高裁判所で「労働時間と給与(賃金)」について真逆の判決が出ましたね。

【1つめ】は、
トラック運転手が何時間働いても残業代が支払われない「固定残業代」の問題
⇒会社側敗訴で高裁へ差し戻しました(残業代を計算し直して支払え)
⇒⇒超要約すると、会社とトラック運転者が契約したとする内容は
 労基法37条の趣旨に反するからまかりならん

裁判所HP 未払賃金等請求事件 最高裁判所第二小法廷  令和5年3月10日判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91858

【2つめ】は、
埼玉公立学校の教員が何時間働いても残業代が支払われない「固定残業代」の問題
⇒教員側の敗訴(上告棄却)(残業代は支払わなくてもよい)
⇒⇒超要約すると、給特法で月給4%の教職調整額が定額支給されているので問題ない

【1つめ】は固定残業代の否定、【2つの】は固定残業代(給特法)の肯定と
真逆の判決内容になっております。

***
小職は民間企業の労務顧問等を業としておりますので、
【1つめ】の最高裁判決の方が実務に関わっており(最高裁判決しか読んでおりませんが)
判決内容は概ね理解できるものです。

一方、【2つめ】の教員の超過勤務訴訟に係る学校関係の方は、
仕事でも親戚等も関わっておりませんが、酷い判決だと思います。

この給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)は、
いつ制定されたと思いますか?

1971年(昭和46年)です。

この当時の就労実態調査等から月給4%の教員調整額が定まり、
一部例外はあるものの公立学校の教員は給与定額で働かせ放題が可能になりました。
(注:このコラムでは給特法の細かな点は触れておりません)

教員の過重労働は周知の事実となった今、
文部科学省は給特法の改正を予定しておりますが(写真)、
その文科省の資料に
「我が国の教師の業務は長時間化しており、近年の実態は極めて深刻」と
明記されています。

そこで【2つめ】の埼玉公立学校の教員からの訴えの期間を確認すると、
平成28年~平成30年の過重労働についてであり、文科省が明記している
「近年の実態は極めて深刻」に合致しております。

しかしながら最高裁は、(判決文を読んでないので恐らく)給特法を盾に棄却しました。
結局は法律改正を待つしかないようです。

なお、給特法は写真のとおりのスケジュールで改正が検討されていますが、
令和4年度は「勤務実態調査」になっております。

1日も早い給特法の改正と、教員の皆様の過重労働が改善されることを願ってやみません。

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川浪宏
専門家

川浪宏(社会保険労務士)

社労士事務所HIKARI

社会保険労務士の様々な業務の中でも、働きやすく長く勤務できる労務環境の創出を経営者と従業員両方の視点から支援し、企業のホワイト化を実現。さらに採用サポートも行い、中小企業の人材確保と維持を支える強み。

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