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2016年 熊本地震 住宅地の地盤被害③

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テーマ:災害

被害の大きかった益城町へ

益城町は断層に挟まれていた事もあり被害が大きかった地域の一つです。
相談物件は数回の増築をしていたので、一部ブロック基礎もありますが
なんとか土台上げでも対応ができそうな物件です。
お話を聞くと、ご近所でもたくさんの家が困っているとのことでしたので、
お隣さまを含めて何件かご紹介いただきました。
お隣の家も少し傾いているようですが、それより大きな問題が!
基礎コンクリートの材質が良くなかったのか、アンカーボルトが錆びており、
土台と基礎が分離して家が前に迫り出していました!

こうなると家を曳くのか、基礎を新しく築造するのかとの選択になりますが、
基礎の高さがかなり低いこともあり、なかなか手強い案件です。

相談者さまのお話を聞くと、1回目の地震でなんとか耐えた建物でも、
2回目の揺れで耐えきれず倒壊してしまったものが多いそうです。
この周辺には昔からの集落が9集落あるそうなんですが、
そのうちの9割位の建物が倒壊など大きな被害にあったそうです。
そのほとんどが日本建築で、土佐弁でいうところの「りぐった家」とのことでした。
玄関から和室など、開口部が広めでゆったりした造りのようです。



「この集落の人は日本建築ではもう建てないのではないか?」言われていたので
「伝統的な日本建築でも瓦葺き屋根の家でも、きちんとした設計と
きちんとした施工の建物であれば、強度的に問題になることはないはずですよ」
とやんわりとはお伝えしましたが、さすがにそれ以上は言う事はできませんでした・・・・・

この相談者さまの前の道路の向いは、やや新しい造成地でした。
水路を挟んでいる事からこの水路を挟んで新旧宅地が分かれているようです。
不思議な事に、この低地の造成地では大きな被害も液状化も見られませんでした。
一般的に、旧集落は比較的小高い所の地盤が安定していることから発達すると言われます。
ですが、益城町では旧街道沿いの小高い所での被害が多いことが見て取れます。
これは後日日経アーキテクチュアでも記事になっています。
通常ローム(火山灰)台地の地盤は、住宅程度の建物では問題にならないと言われます。
ですが、やはり火山灰でも種類や状態によって大きく状況が変わるようです。
これからはローム台地であっても安心はできないと判断する必要があります。
高知県では赤土や黒土と言われるものが火山灰です。
緩い火山灰や支持層に傾斜がある場合には注意する必要がありそうです。

ガケに近接する建物の被害格差

益城町は台地形状になっている事から、少なからず高低差が出てきます。
熊本県のガケ条例では2m以上のガケに近接する場合対策が必要です。
下から見ただけの判断になってしまいますが、
この建物では間知ブロック積み擁壁が崩壊しましたが、被害は軽微で済んだように見えます。

ガケ条例での対応策かどうかは分かりませんが、明らかに深基礎になっていました。

一方こちらは、河川沿いでの被害です。
河川堤防の間知石の空積みが変形、崩壊してしまっています。

目視ですが、5軒中の4軒が不同沈下しているように見えました。
地盤への対策があったのかどうかは不明です。

地盤補強した建物の被害

その対岸では、河川側への側方流動により宅地側の地盤面が下がったと考えられ、
それにより鋼管杭で支持された建物が回転したと推測される物件がありました。
回転の結果、局所的な荷重により鋼管杭の一部が座屈する被害も起きていました。

基礎より鋼管杭が外に出てしまっています。

通常、住宅の地盤改良として行う鋼管杭は基礎との一体化は行いません。
これは今後の検討課題となりそうです。

また、屋外に設置する貯湯タンクの被害も見られました。

これからは建物基礎と貯湯タンクの基礎は一体化を検討する必要がありそうです。

熊本市内では、液状化の被害を少し視察して同業者との情報交換を行いその後帰路につきました。


その他の写真はこちら
熊本地震記録写真②

大震災の度に想定外?

熊本県の資料によると、今回の熊本地震で、「危険」と「要注意」とされた宅地が7000件超、
一部報道によるとその内「危険宅地」は2700件超といわれており、他の震災を圧倒しています。
熊本地震以降、私たちが所属する地盤品質判定士協議会や住宅地盤品質協会などでも
宅地災害に対する検討が活発になってきています。
これからは、今までの震災などで既知となったリスクに対して更に真摯な対応が必要でしょう。

また、震災後に問い合わせが増えたものに建物の不同沈下があります。
建物の不同沈下の原因はそのほとんどが地盤に起因しています。
問い合わせや現地調査、見積もりだけでも、毎月10件は下りません。
最近は県外からの相談も多くなってきましたが、
高知県だけでもそれだけの家が今現時点でも実際に傾いていると言えます。
高知県ではやっと耐震診断、耐震補強工事が活発になってきたようです。
その診断時に建物の傾斜が発見される事も多いようです。
耐震を考える場合、家の重心を基に戻す事は大変重要と考えています。
想定外を想定する事が防災への第一歩と考えています。

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専門家

穂盛正明(地盤品質判定士)

有限会社グランドワークス

高知県内各地の地盤・地質に詳しく、調査データのストックも豊富である。改ざん不可能な地盤調査システムによるデータの信頼性の高さが強み。四国内で唯一のアンダーピニングによる沈下修正の直営施工班を保有する。

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