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弁護士の田沢です。
東京都の環境確保条例による騒音規制の対象から,子どもの声を除外する方向で見直しが進められているようですね。子供の声を騒音扱いすることは,自分たちが子供のころのことを考えると,非常に寂しい話ですが,やむを得ず昼夜逆転した生活をしている人たちへの配慮もゼロであってはいけませんよね。
http://jijico.mbp-japan.com/2015/02/17/articles16100.html
東京都が平成12年に制定した「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(いわゆる「環境確保条例」)の第136条は、「何人も」規制基準を超える騒音などを発生させてはならないと定めています。
この条文の文言を見る限り、規制対象に制限がないため「子どもの声」も騒音に含まれ、保育園や幼稚園、公園なども規制の対象となってしまいます。実際、これらの施設から発せられる「子どもの声」がうるさいとして、近隣住民とトラブルになり訴訟にまで発展しているケースもあるようです。
そんな中、東京都は「子どもの声」を騒音規制の対象から除外する方向で条例の見直しを進めています。これは、規制基準を遵守するように「子どもの声」を抑制することは、心身の発達段階にある子どもにとってストレスになり、発育上も望ましくないとの意見があるためです。また、健やかに成長するという子どもの権利は可能な最大限の範囲において確保されなければならず、児童福祉法も「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない」(同法1条1項)と規定していることなども根拠に挙げられています。
しかし、条例改正案に関しては、根強い反対意見もあり、論議が紛糾しそうな雰囲気も漂っています。昔は、保育園や幼稚園、公園などの施設が地域社会に溶け込んでいて、そこから発せられる「子どもの声」に違和感を覚えるようなことはなかったと思われます。しかし、時代の変化とともに、さまざまなライフスタイルが生まれ、少子高齢化が進み地域住民相互の関係も希薄化してきたために、このような問題が生じるようになったのかもしれません。
誰しも、静かな環境で生活する権利を侵害されるいわれはないため、一般通常人の感覚に照らして我慢の限度を超えるような場合には、やはり法的責任が生じます。その意味では、たとえ条例が改正されたとしても「子どもの声」に対する規制が完全になくなるというものではありません。
「子どもの声」を環境確保条例の規制の対象外にしようとする東京都の理念自体に異を唱えるつもりはありませんが、住民側の静かな環境で生活する権利に全く配慮しないようなやり方ではなく、子どものための施設に対する住民側の理解を得られるような制度作りも並行して模索していくことが、重要ではないでしょうか。
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