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弁護士の田沢です。
家庭裁判所で少年事件を担当し,少年調査官と一緒に少年の処遇を考える経験をすると,厳罰化する方向で少年法を改正することには抵抗感があるんですよね。
http://jijico.mbp-japan.com/2015/01/21/articles14999.html
「つまようじ事件」で世間を騒がせ、逮捕されたのは19歳の少年でした。少年は「自分のような19歳の人間が捕まっても、刑務所ではなく少年院に行くことになるのはおかしい。少年法を改正すべきだ」などと主張しているとの報道もなされていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
まず、現行少年法のもとでも、少年が成人と同様に処罰されて刑務所に行くことはあります。家庭裁判所で行われる少年審判手続は、あくまでも20歳に満たない「少年」を対象としていますので、罪を犯したときに少年であったとしても、家庭裁判所に送致されるときにすでに20歳に達していた場合には、家庭裁判所に送致されることなく、通常の刑事手続として進行します。また、一旦は家庭裁判所に送致されたものの、その後に20歳に達した場合でも、家庭裁判所から検察官に送致され、通常の刑事手続として進行させることになります。
さらに、たとえ少年であっても、家庭裁判所が「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当」と判断した場合は、検察官に送致しなければならず、特に「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件で、犯行時に16歳以上であった少年」については、原則として検察官に送致し、刑事手続として進行させなければなりません。
このように、19歳の少年だからといって、刑務所に行くことは絶対にないなどということはありません。ただ「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」以外の罪の場合において、少年であるにもかかわらず刑事処分に付されて懲役刑を科されるというのは、犯罪的傾向が非常に進行しているような場合に限られるでしょう。少年の考え方が稚拙で精神的に未成熟であれば、刑事処分ではなく、原則どおり保護処分が相当とされることが一般的でしょう。
成人に近い年齢の場合には、成人と同様に刑事処分を受けさせる方向で少年法を見直すべきかという点については、直ちに肯定できるものではありません。それは、昔に比べて寿命が長くなっている分、精神的に成熟するのも遅くなっているかもしれないからです。
凶悪犯罪の低年齢化により、少年法は、これまで厳罰化の方向で改正されてきました。しかしながら、少年法の理念である「少年の健全育成」は、そもそも社会の責任です。少年の責任を追及すべく、いたずらに刑事処分を受けさせるように少年法を改正していくなどということは、むしろ社会の責任を放棄しているのと同じであるといった考え方も一概に否定することはできないように思われます。
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