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ワンセグ付きスマホとNHK受信料支払義務

2014年7月30日 公開 / 2021年2月26日更新

テーマ:時事ネタ

コラムカテゴリ:ビジネス

弁護士の田沢です。

面白いテーマの解説を依頼されました。
http://jijico.mbp-japan.com/2014/07/30/articles11321.html
NHKがインターネットを活用したサービスを恒常的に提供できるようにするための放送法改正案が、本年6月19日、参議院総務委員会で可決されたのを受けて、NHK会長が「ワンセグが付いていないスマホユーザーからも受信料を徴収する」との意向を明らかにしました。NHKの受信料未払率が年々上昇していることが背景にあるようですが、インターネットに接続できるスマホを持っているだけで受信料を支払わなければならないことになるのは、一般国民にとっては有難くない事態でしょう。
ところで、この発言は、ワンセグ付きスマホの場合、現在でも受信料を徴収されることを前提にしているようですが、果たして本当なのでしょうか。
まず、放送法64条1項は「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備…のみを設置した者については、この限りでない」と定めています。また、同条3項は「協会は、第1項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。…」と定めており、この3項による総務大臣の認可を受けたものが日本放送協会放送受信規約です。
そして、この規約4条1項が「放送受信契約は、受信機の設置の日に成立するものとする」と定め、同規約1条2項が、「受信機」について「家庭用受信機、携帯用受信機、自動車用受信機、共同受信用受信機等で、NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備をいう」と定めているため、ワンセグ付きスマホも「受信機」に含まれるとして、受信料徴収の根拠とされているようです。
しかしながら、放送法64条3項で「総務大臣の認可を受けなければならない」と定めているのは、あくまで「契約の条項」です。当事者間に成立した契約の内容についてであって、「そもそも誰が契約の当事者になるのか」という点についてまで総務大臣の認可を受けることにはなっていないようにも読めます。そうすると、規約4条1項の定めは総務大臣の認可外の事項であって、NHKが一方的に定めた内容に過ぎないものと考えられ、ワンセグ付きスマホを所持している者に対し、規約4条1項を根拠に受信契約が成立するとして受信料を徴収することは、そもそも法律上の根拠がないと反論することが可能になります。
しかも、放送法64条1項は「受信設備を設置した者」と定めているにもかかわらず、規約1条2項や4条1項ではいつの間にか「受信機」とされていて「携帯受信機」も含まれるものとされているのですから、規約で法律の適用範囲を勝手に拡大してしまっているとの疑念があります。「ワンセグ付きスマホを所持する者」は、そもそも放送法64条1項の「受信設備を設置した者」には該当しないと反論したり、仮に、ワンセグ付きスマホが「受信設備」に含まれるものと譲歩したとしても、同条1項但し書の「放送の受信を目的としない受信設備」であるため、契約義務はないと主張していくことも考えられます。
このように、ワンセグ付きスマホを所持しているからといって、受信料支払義務が生じるのかという点は、法律上はグレーとしか言いようがありません。受信料未払率が上昇しているとはいっても、国民に義務を課すものである以上、法律の明確な根拠が必要であることは論を俟(ま)たないでしょう。

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田沢剛

法的トラブル解決の専門家

田沢剛(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所)

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