<認知症で知らない間に裁判,自宅競売へ>
弁護士の田沢です。
自動車運転死傷行為処罰法について解説しました。
http://jijico.mbp-japan.com/2014/05/21/articles9879.html
平成25年11月20日に可決成立した「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(いわゆる自動車運転死傷行為処罰法、または悪質運転処罰法)が、本年5月20日に施行されました。
飲酒運転や無免許運転などの悪質で危険な運転による死傷事故が後を絶たないにもかかわらず、重い刑罰(死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役、負傷させた場合は15年以下の懲役)を定めた危険運転致死傷罪(刑法208条の2第1項)では、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態」で自動車を走行させることにより人を死傷させた場合に限定されていました。これに該当しない場合には、軽い刑罰(7年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金)の自動車運転過失致死傷罪(同法211条2項)しか適用できないというのは不合理ではないかといった国民の声に鑑み、運転の悪質性や危険性などの実態に応じた処罰を可能にすべく、罰則の整備を行うために制定されたものです。
これまで刑法に規定のあった危険運転致死傷罪を刑法から移し、従来の危険運転の類型の中に「通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」を加えました。
そして、アルコール、薬物又は一定の病気の影響により、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態であることを自ら認識しながら自動車を運転し、実際にそのような支障が生じて死傷事故を起こした場合を少し軽い類型の危険運転致死傷罪(死亡させた場合は15年以下の懲役、負傷させた場合は12年以下の懲役)として新たに定めることにより、従来の自動車運転過失致死傷罪よりは重く処罰できるようにしました。
つまり、「(アルコール等の影響により)正常な運転が困難な状態」が自動車の走行開始時から生じていたものが重い類型で、走行開始時ではなく走行中に生じたものが軽い類型ということになります。
また、無免許で自動車を運転し、死傷事故を起こした場合については、死傷事故の類型に応じて、より厳しく処罰できるように刑が加重されています。
そのほかにも、アルコール等の影響により走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が過失により死傷事故を起こした場合において、アルコール等の影響の有無や程度が発覚することを免れる目的で、さらにアルコール等を摂取したり、あるいはその場を離れて体内のアルコール等の濃度を減少させることで「逃げ得」となってしまう事態を防ぐため、このような行為を過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(12年以下の懲役)として別途処罰の対象としています。
このような法改正や世論を背景としてか、我が国における自動車の運転による死傷事故の件数そのものは減少傾向にあります。ただ、ひとたび事故を起こしてしまった場合の結果の重大性に鑑みると、今後も自動車自体が凶器であることを肝に銘じて運転する心構えが必要であることは言うまでもありません。
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