「全く当たらない」って,どうよ?
弁護士の田沢です。
政治資金規正法について解説を頼まれました。
http://jijico.mbp-japan.com/2014/04/09/articles8920.html
みんなの党の渡辺氏が、化粧販売会社の会長から8億円もの資金を借り入れていたことがニュースで取り沙汰され、その中で「政治資金規正法」が指摘されています。同法は昭和23年に制定され、その後、何度も改正されて今日に至っております。「議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」に、大きく2つに分けて定められています。
(1)政治資金の収支の公開(政治団体に設立の届出等を義務付け、1年間の政治団体の収入、支出及び資産等を記載した収支報告書の提出を政治団体に義務付け、これを公開することによって政治資金の収支の状況を国民の前に明らかにすること)
(2)政治資金の授受の規制等(政治活動に関する寄附等について、対象者による制限や、量的、質的制限などを行うこと)
今回の渡辺氏の問題について、同法のみに焦点を絞って考えてみます。(1)の点については、あくまでも政治団体を規制するものであるため、その虚偽記載が罪に問われるのは、特定の政治団体に関する政治資金収支報告書であることが前提となります。そうすると、一旦は、渡辺氏の個人口座に入った資金が特定の政治団体に流れ、その政治団体がこれを反映させない虚偽の政治資金収支報告書を作成していた場合には、その会計責任者ないしは実際に虚偽記載を行った者が罪に問われることになります。
他方で、同法は、(2)の点について、公職の候補者の政治活動に関する金銭及び有価証券による寄附を禁じ(21条の2第1項)、公職の候補者によるその寄附の受領を禁じております(22条の2)。政治家個人に対する寄附は、あくまでも政治団体を通じてしか行うことができない仕組みになっておりますので、もしも、その8億円が渡辺代表個人に対する寄附に該当するとなると、それだけで寄附をした化粧販売会社の会長、寄附を受領した渡辺代表のいずれも同法違反に問われることになります。
最終的な立件には、相応のハードルがあるものと推測されるところですが、いずれにしても、政治資金規正法に定める罪を犯した者は、公職選挙法に関する罪を犯した者と同様に、一定期間(①禁錮刑に処せられた場合は、その裁判が確定した日から刑の執行を終わるまでの間とその後の5年間、②罰金刑に処せられた場合は、その裁判が確定した日から5年間、③刑の執行猶予の場合は、その裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間)、公民権(公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権)を停止され、合わせて選挙運動も禁止されることになっております。
政治家が政治資金規正法違反で立件されることは、仮に罰金刑で済んだとしても、その政治生命を断たれてしまうことになるといっても過言ではないといえるでしょう。
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