NHK受信契約に関する東京高裁判決
弁護士の田沢です。
犯罪の故意とは,罪を犯すことの認識があることを意味し,未必の故意は,自らの行為によりそのような結果が生じないだろうと考えつつも,生じても構わないと認容して行為に至った場合を指します。基本的には内心の状態を示すのですが,では,被疑者ないし被告人が,行為そのものは認めても故意を否認した場合には,検察官は故意の存在を立証しなければなりません。内心の状態を示す直接の証拠がない場合には,状況証拠を積み重ねるしかありません。例えば,殺人事件で殺意を否認されてしまい,殺意の立証に失敗すると,傷害致死罪にしかならず,殺人罪よりも軽くなってしまいますので,動機の有無,殺害の方法,攻撃の部位,攻撃の執拗性などといった客観的な事実から殺意を立証することになります。ここから浮かんでくるのは,もしも客観的な事実から故意が立証されるのだとすると,本来の立証命題であるべき内心の状態が,いつのまにか客観的な事実にすり替わっていること,すなわち,ある客観的な事実の存在=故意の存在ということになります。常識的判断としては,これでよいのかも知れませんが,マイノリティの最終的な砦であるべき司法判断が,常識のみに縛られてしまうことは危険です。
最近も,覚醒剤の密輸において,無罪判決が出ました。1.8キロのコーヒー豆の袋に覚せい剤が入っていることを認識していたか否かという点が争点となったようですが,常識のみに捕らわれた判断をすると,有罪となっていたでしょう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130927-00000216-jij-soci
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