NHK受信契約に関する東京高裁判決
弁護士の田沢です。
憲法76条3項は「すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される。」と定めて,裁判官の独立を定めております。この間,2つの同種事案について,同一の裁判官から全く同じ判断をされ,これに対し,いずれも不服申立てをしたところ,高裁の別々の部に係属することとなり,1つは原決定維持で,もう1つは原決定取消しの判断がなされました。高裁の裁判は,3人の合議体で行いますので,高裁に2部あると,少なくとも裁判官は6人存在し,3人ずつ別々の部屋で仕事をしていることになります。事件は機械的に配てんされますので,同種事案であっても,一方の部の裁判体の判断と,もう一方の部の裁判体の判断が異なることがあるのは,裁判官の独立からしてやむを得ません。判断を統一させるためには,さらに上級審の判断を仰ぐしかありません。最高裁の判断は,下級審の裁判官の判断を拘束しますが,最高裁の判断がない問題は,下級審の判断がまちまちとなることが多々あるということになります。同じ下級審の裁判所,例えば横浜地方裁判所も,民事部が9部存在します。その中に,一般の民事事件を扱う部が,8部ありますから,自分の事件がどの部に係属するかによって,判断が違ってきてしまうことがあるということです。一般の人からみたら,同じ横浜地方裁判所の判断なのに,どうして違う判断がなされるのか,不思議に思うかもしれませんが,同じ横浜地方裁判所であっても,そこに所属する裁判官が多数存在することから,どの裁判官に判断されるかで結論が異なってしまうということが多々あるということです。