NHK受信契約に関する東京高裁判決
弁護士の田沢です。
とうとう,再審開始決定が出ましたね。
http://mainichi.jp/select/news/20120607k0000e040160000c.html?inb=yt
この事件は,刑事裁判における有罪の立証というものが,どうあるべきなのかを教えてくれる格好の事件となっています。今回の東京高裁の決定は「無罪を言い渡すべきことが明らかな新たな証拠」が提出されたことが前提となっていますが,第一審の無罪判決を覆して無期懲役の判決を下した東京高裁の判決がなされたときとでは,裁判所に提出された証拠にそんなに大きな違いがあったとは思えません。第一審が無罪判決を言い渡したときに,検察官が提出した証拠だけでは「被告人が罪を犯した認定するについて合理的な疑いを容れない程度の立証」がなされていない,言い換えれば,「被告人を犯人とするには合理的な疑いがあった」ということなのです。「他に犯人がいる疑いがある」以上,検察が言うように「被告人が犯人ではないということにならない。」などといくら足掻いてもだめなのです。検察が立証すべきなのは,「情況が,被告人が犯人であることと矛盾しないこと」ではなく,積極的に「被告人が犯人であること」であり,それに疑いが生じるものである以上,無罪の判決を言い渡すべきことは,刑事裁判の鉄則です。