NHK受信契約に関する東京高裁判決
弁護士の田沢です。
自己破産するためには,多額の負債があって,自らの財産ないし信用力では返済できないという支払不能の要件が必要です。普通は弁護士が代理人となって自己破産の申立てをするのですが,裁判所は,その負債につき,申告額を基準に判断します。したがって,代理人となる弁護士が負債及び債務者の財産をよく調査して申立てをしなければなりません。ところが,代理人がこれを怠り,本来,債権者でない者を債権者として債権者一覧表に記載してしまうなど,誤った負債額を前提に破産申立てをしたところ,そのまま裁判所が破産決定をしてしまうことはあり得る話です。私がこれまで経験した例では,実際に破産手続が始まってから調査をしたところ,代理人が利息制限法に基づく引直し計算をしないまま,債権者が主張する金額をそのまま債務額として債権者一覧表に記載していることが分かり,結局,債権届出をしてきた破産債権者の全てが過払いになっており,過払金を回収する一方で,債権届出をした債権者には届出を取り下げてもらった結果,債権者が1名もいなくなってしまったということがありました。もちろん,取り戻した過払金は,これを配当すべき債権者がいませんから,手続の費用を差し引いて本人に返還せざるを得ませんでした。これは代理人のミスとしか言いようがありません。破産申立てをする必要がある事案か否か,きちんと調査していなかったということになります。