NHK受信契約に関する東京高裁判決
最高裁判所による速報値として明らかにされたものによりますと,平成22年は前年比減となっており,具体的には,平成21年が12万6265件であったのに対し,平成22年は12万0930件となっていたようです。前年同月比でも,平成22年5月から平成23年10月まで前年同月比減が継続しており,平成23年10月は,19.2%減とのこと。私が横浜地方裁判所に勤務していた平成11年ころは,毎年40%増という数値だったことを考えると,相当減ってきているということがいえるかも知れません。当時は,申請人(債務者)が,自ら作成してきた債権者一覧表の債務額を前提に支払不能と認められれば,破産宣告をしている状態でしたが,最高裁判所が,貸金業者の取引履歴開示義務を認めてからは,約定の債務額ではなく,法律上有効な債務額の計算をすることが可能となり,過払金が生じているものについてはそれを取り戻して,他の有効な債務の返済に回すということが可能となったり,そもそもすべての債権者に対し過払いとなっていたり,などということで,自己破産の申請をする必要がない場合が増えたということが一因でしょう。このように時代が変わったということはいえるのですが,ある貸金業者に対し債務が残っているとして破産申請をし,免責決定をもらった債務者が,「その後に取引履歴の開示を受けて計算してみたら,実は過払いになっていた。免責決定をもらったけれども,過払金を取り戻したい。」と考えた場合,それは可能でしょうか。裁判例は分かれているようです。自ら特定の貸金業者を債権者として扱い,自己破産申請をし,免責決定をもらっておきながら,今度はその貸金業者が実は債権者ではかったとして過払金を取り戻すなんてことが,信義則上許されるのかという価値判断の問題になります。このような問題が生じた背景には,最高裁が貸金業者の取引履歴の開示義務を認めるまで,下級審レベルではこれを認めて来なかったという実情がありますので,裁判所にも責任の一端があるとはいえないでしょうか。