過払金と契約個数

田沢剛

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消費者金融に対し過払金の請求をすると,取引は取引1と取引2に分かれており,二つの取引を一つの取引として過払金を計算することはできない,取引1によって生じた過払金は,取引1の終了時から10年以上が経過しており時効消滅した,取引2は債務がまだ残っているなどと反論されることがしばしばです。例えば,取引1によって50万円の過払金が生じた段階で,取引2を開始して50万円を借り入れたとします。取引1と取引2がまとめて一つの取引であるとすると,取引1によって生じた過払金は取引2の最初の貸付金の返済として即充当されますので,取引2は,債務が0円から出発することになり,以降の返済はすべて過払金ということになります。しかし,取引1と取引2をまとめて一つの取引として扱えないとなると,取引1によって生じた過払金は,取引2の最初の貸付金の返済として充当することはできず,取引2は最初の貸付金50万円からスタートして計算することになるため,債務が残ってしまうことも当然にあり得ます。これが取引分断の主張というものです。しかしながら,消費者金融は,一度完済した顧客は優良顧客となるため,その後も取引を継続したいことから,何度も融資勧誘をして,取引の再開を期待します。このような取引関係からすると,契約が複数あっても,すべてを一つの取引として扱うことが相当です。特に,平成12年には,出資法の上限金利が改正されたため,取引が終了していないにもかかわらず,金利の引下げのために新たに契約を締結し直していることが多々あります。よって,新たに契約を締結し直しているからといっても,法改正に伴ったやむを得ないものである場合には,別々の取引と扱うことは不相当といえます。消費者金融から取引分断の主張がなされた場合には,このような観点からの分析も必要となります。

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田沢剛(弁護士)

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所

裁判官時代に民事,刑事を含めて様々な事件を担当しました。紛争処理にあたり,裁判所がどのような点を問題にしているのか,どの部分の証拠が足りないのかなど,事件の見通しを踏まえたアドバイスを心掛けています。

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