後遺障害による労働能力喪失

田沢剛

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交通事故で負傷し,例えば後遺障害12級の認定を受けると,14%の労働能力を喪失するものと扱われます。そこで,被害者の場合には,加害者に対し,症状固定後から67歳までの収入のうち14%が得られなくなるものと擬制して,それを現在価値に換算した金額の賠償を請求することになるのですが,事故前の収入と症状固定後の収入に変動がない場合,賠償請求できないのでしょうか。裁判所は,変動がなくてもそれが本人の努力によってカバーされているなどの要素を検討して賠償請求を認めることが多々あります。では,症状固定後,67歳になる前に別の原因で被害者が死亡した場合において,死亡したところまでの期間の賠償しか認められないのでしょうか。この点について,最高裁は,症状固定後に別の原因で死亡したからといって,賠償すべき逸失利益はその影響を受けないものと判断しています。損害は,すでに事故時に生じていると擬制しているからです。事故時に損害が発生しているものと擬制するのであれば,症状固定後も収入に変動はないといった事後的な事情も,同じように考慮すべきではないとはいえないのでしょうか。

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田沢剛(弁護士)

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所

裁判官時代に民事,刑事を含めて様々な事件を担当しました。紛争処理にあたり,裁判所がどのような点を問題にしているのか,どの部分の証拠が足りないのかなど,事件の見通しを踏まえたアドバイスを心掛けています。

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