NHK受信契約に関する東京高裁判決
商法429条1項は,「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは,当該役員等は,これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。この規定は,一種の棚ボタをもたらすことがあります。法人に対する債権が回収不能になっている場合,例えば,その法人と取引をして売掛金が生じた時期において,その法人の資産状態が悪化しており,取引をしても支払ができないであろうと予測し得たにもかかわらず,法人側がこれを秘して取引をした場合に,取引することを控えなかった取締役に対し,回収不能になった不良債権相当額の賠償請求をするというものです。もちろん,その取締役に財産がなければ意味はありませんが,財産がある場合には,法人から回収できなくても個人から回収できるということになります。法人に対する債権は,代表者がこれを保証しているなどの事情がなければ代表者には請求できないのが原則ですが,こういった規定を駆使することで,代表者から回収することも不可能ではないということを覚えておく必要があります。