コラム
最期の言葉 ~ そのひとことを確実に伝えるために ~
2017年7月11日 公開 / 2018年9月22日更新
先月22日に、乳がんで闘病中の女性フリーアナウンサーが34歳の若さで亡くなられました。きっと、まだまだやりたいことがたくさんあったことでしょう。また、小さな二人のお子さんの成長を見届けることなく旅立たざるを得なかった無念は察するに余りあるものがあります。小さな子を持つ同じ親として、またひとりの人間として心よりご冥福をお祈りするばかりです。
そして、翌日に最愛の夫が記者会見に臨んだのですが、その中で別れの言葉は、『愛してる』だったと公表されました。何ということでしょう。あくまでも伝聞と想像でしかありませんが、命が消えるその瞬間まで最愛の人を想い感謝の気持ちを伝えようとしていたとは。人間の強さや美しさを改めて思い知らされたような気がいたしました。
もっとも、誤解をおそれずに申し上げれば、がんで亡くなられる方が息を引き取る寸前まで周囲の人と言葉を交わしたりできるのは極めてまれなケースです。テレビドラマでは、亡くなる直前まで意識がはっきりしていて、手を握り合いながら『ありがとう』と言葉を交わす場面も珍しくありませんが、実際の医療の現場においては亡くなる数日前くらいから時間や場所の感覚がなくなってしまう『せん妄』という混乱が生じるそうで、はるか昔に亡くなった両親がお迎えに来た夢を見る『お迎え現象』などもそのひとつと聞いたことがあります。
これまでも私は、『元気なうちから自分の想いを伝える準備をしましょう』と申しあげてきましたが、こういうお話をすると必ず『縁起でもない』あるいは『まだ早い』という声を耳にします。確かに、多くの日本人にとって、これまで『死』をテーマに考えたり話したりすることはタブーとされてきましたし、なかにはあからさまに忌み嫌う方も大勢いらっしゃいました。
しかし、自分の想いは、自分の心の中に隠し持っているだけでは相手には伝わりません。命あるものいつかは尽きるのが運命であり、自分が黄泉の国に旅立つにあたって自分の想いを伝えたい人にはきちんと伝えたい。とすれば、そのためには自分が元気なうちから法的効力はもちろん自らの想いもたくさん込められた内容をきちんとした文書にしておいてはいかがでしょうか。
私はいま、人生の残り時間が少なくなった方の支援に取り組んでいますが、19年前に50歳代で病に倒れこの世を去らざるを得なかった母の影響が少なからずあるのかもしれません。最期に母は何を言いたかったのだろうか、今もその想いを推し量り探し続けながら、こんな想いをする人がこれ以上出てきてほしくないという願いが現在の私のエネルギーになっていると理解しています。
だからこそこれからも私は、この地域でもほとんどいない『医療・福祉の専門職とともに、人生の残り時間が少なくなった方を支える法律専門職』として、ひとりでも多くの方に元気なうちから『想いを伝える遺言書』を書くことの大切さと必要性をお伝えしていきます。
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