平塚でおなじみの相続の専門家がラジオで語る ~ 遺言あれこれ その1 遺言の種類・方式 ~
大型連休も終わって、少し夏を感じる日の午後でした
5月も後半に入り新緑が目にまぶしい季節となりました。相続まちなかステーションのある神奈川・平塚もここ数日25度を超える夏日が続いておりますが、そんな少しばかり夏が待ち遠しい陽気の5月21日(木)にFM湘南ナパサ『ナパサタイムスアフタヌーン』にコーナー出演してまいりました。
番組の内容 ~ 相続の基礎知識 その2 相続放棄と限定承認 ~
自分自身が実際に相続を経験したという方はそれほど多くないかもしれませんが、相続放棄という言葉は皆さんどこかで一度くらいは耳にしたことがあるかもしれません。しかし、私ども法律専門職から見ますと、この『相続放棄』くらい一般市民の間で誤解・誤認されている相続用語はないのではないか、と思うくらいに誤った理解をされている方が多くみられるのも事実です。そこで、ぜひ一般の方のために相続放棄に対する正しい情報をご提供したいと思いますが、まずは恒例の相続・遺言に関する基礎知識の確認をすべく、番組パーソナリティの滝島幹和さんに答えていただくところから始めてみました。
【設問】
次の、相続や・遺言に関する記述は、正しいか間違っているかを答えてください。
(1) 相続放棄をする場合には、原則として他の相続人の承諾を得なければならない。
(2) 2年前に亡くなった父が、生前友人の借金の保証人になっていたことがつい最近
判明した。この場合、相続放棄を申し立てることによって、保証人としての責任を
相続する義務を免れることができる。
(3) 先月、父親が亡くなったが財産や負債がどのくらいあるのかを調査するには相当な
時間を要することが分かった。この場合、プラスの財産がある限度で相続をするとい
う方法によって相続放棄を申し出ることも認められる。
さて、各々の設問は正しいでしょうか、それとも間違っているでしょうか。
まず、(1)相続放棄は、各相続人に認められた固有の権利であり3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで相続放棄が認められます。そして、各相続人はそれぞれ自由な意思に基づいて単純承認または相続放棄をすることができ、他の相続人の同意や承認を求める必要はありませんので誤りと判断できます。そして(2)相続放棄については、相続開始もしくは自己が相続人となったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければならないという厳格な期間制限があります。設問のケースでは、お父様が亡くなったのは2年前ということですので、例えば生まれてすぐに両親が離婚をしてからずっとお父様とは会っておらず、つい最近になってお父様が亡くなったことを初めて知ったというような特別な事情でもない限り一般的には認められませんので、本設問でも誤りと判断します。さらに、(3)相続放棄の特別な形態として、プラスの財産とマイナスの財産がそれぞれ判明しない場合などで、プラスの財産を限度に相続を承認するという方法が認められており、これを限定承認といいます。相続人全員の合意によって、3か月以内に家庭裁判所に申し立てを行うことを条件に認められますので、設問は正しいと判断できます。
以上より、(1)と(2)は誤りであり、(3)は正しいと言えるでしょう。
【相続放棄と限定承認について】
冒頭でも述べましたが、どこかで一度は聞いたことのある『相続放棄』ですが正しく理解されている方はそれほど多くはないというのが正直な感想です。事実、つい先日相続まちなかステーションにご相談においでになられた方の中にも、『10年前に亡くなった祖父の相続を放棄したい』とおっしゃる方や『生前、父は私以外の兄弟には全員相続放棄させたと言っていたはずなのに、父が亡くなったら兄弟たちはそんなこと聞いてないと言ってきて困っているのですが』という方もいらっしゃいました。
そこで、知っておきたい相続放棄のポイントや注意点をいくつか挙げてみました。
(1)相続放棄は、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることによって認めら
れる
→ 相続開始前に相続放棄をすることは認められない
相続開始後に、特定の人の相続分をゼロにすることは相続放棄ではなく、遺産分割
協議において相続分がないことを合意することに過ぎない
(2)プラスの財産がある限度で相続を承認する『限定承認』という方法もある
→ ただし、この場合にはすべての法定相続人の合意が必要であり、かつ全相続人によっ
て家庭裁判所に申し立てを行う必要がある。
番組出演の感想
今回のテーマは『相続の基礎知識 その2 相続放棄と限定承認』でしたが、用語の認知度とは裏腹に一般の方にとって誤解や思い込みの多いことを日頃から感じ取っておりました。そこで、ひとりでも多くの方が正しい認識を持っていただくとともに、判断に迷った時には私たち法律専門職に対しても相談してもらうことの必要性についても理解していただくきっかけをご提供できたとすれば何よりであると感じました。
来月以降も、身近な相続・遺言に関するテーマを題材にしながら、地域の皆様に役立つ情報をご提供できるよう頑張ってまいります。最後になりましたが、滝島幹和さん、山田博康さん、そしてお聞きいただいたリスナーの皆様、ありがとうございました。