親や配偶者に遺言を書いて欲しい? まずはあなたから公証役場へ!
先月も終活ブームについて取り上げてみましたが、なかには何気ない終活によって親子の関係や親族の関係を壊してしまう事例も急増していることをご存知でしょうか。
迷惑をかけない老後というキーワードはどこかで一度くらいお聞きになったことがあることと思いますが、最近は子が親に遺言を書いてほしいと迫るケースが増えていると聞いています。
確かに、遺言書があれば不毛で醜い相続トラブルの大半を未然に防ぐことができることは間違いないのですが、普段すっかり会話らしい会話がなくなってしまった親子の間でいきなり『遺言書を書いてほしい』、などと言われたら疑心暗鬼になってしまうのも無理はありません。
また、遺言書やエンディングノートを実際に書いてみようとする方が少しずつ増えていることは、相続・遺言の法律専門職としてとても嬉しいことなのですが、なかにはあまりに不公平な内容の遺言書を作成される方、さらにはある特定の相続人を名指しで非難するなど、もし相続人がこれを読んだらどんな気持ちになるだろうと心配になってしまうような内容の遺言書を見かけることがしばしばあります。
もちろん、遺言書やエンディングノートはご本人の意思のみによって作成することができるものであり、かつ本人の意思が最大限尊重されるべきであることは言うまでもないのですが、せめてこれまでの長い積み重ねによって生じた様々な事情や経緯を少しでも考慮することで、すべての相続人の負担や不満を分かち合い、ひいては速やかに円満に解決することができると考えることは出来ないでしょうか。
親子だから言わなくても分かるだろう。そのように考えてしまうことも決して分からなくはないのですが、親子だからこそもっと気軽に普段から話し合いをしておくことで心の底から本当に分かり合える、そうすることでちょっとやそっとでは壊れることのない強い絆、信頼関係が生まれるのです。これは、一朝一夕にできるものではなく、不断の努力による積み重ねが必要となるのです。
そのためにも、親に遺言を書いてほしいと考える子の立場の方は、ぜひご自分もこの機会にご一緒に遺言書を書いてみてください。また、これから遺言書を書こうとお考えの方は、ぜひすべての相続人の立場に立って遺言書を何度も読み返すことを忘れないでください。親族関係を壊してしまうのか、それともさらに強い絆とすることができるのか。それは、ほんのちょっとしたあなたの思いやりと配慮にかかっています。
これからも私は、この街に生きる人々の想いと願いが理解できる法律専門職として、ひとりでも多くの方に『あなたの想いを大切にしながら家族の絆を守る終活』のご提案をし続けていきます。