平塚でおなじみの相続の専門家がラジオで語る ~ 子どものいない夫婦の相続 ~
今月の放送は、中秋の名月の日になりました
今年の夏は、全国のあちこちでこれまで経験のない高い気温の日々が続き、相続まちなかステーションのある神奈川・平塚も連日30度を超える猛暑日が続きました。しかし、そんな猛暑日がまるで嘘のように涼しくなってきた9月19日(木)にFM湘南ナパサ『ナパサタイムスアフタヌーン』(平塚市代官町・OSC湘南シティのサテライトスタジオで行われた事前収録)にコーナー出演してまいりました。
番組の内容 ~ 相続の基礎知識Ⅴ 寄与分 ~
5月から『相続の基礎知識』を改めて学んでいきましょうということで、第一回目は相続人と法定相続分、第二回目は遺留分、第三回目は相続放棄と限定承認、そして先月は特別受益を取り上げてきました。今月も一般の方の間でもかなり誤解や思い込みが多いテーマである『寄与分』について、なるべく事例を用いながらわかりやすくお話をしたいと思いますが、まずは恒例の相続・遺言に関する基礎知識の確認をすべく、番組パーソナリティの小林和恵さんに答えていただくところから始めてみました。
【設問】
次の相続・遺言に関する記述のうち、正しいものはいくつあるか。
(1) 同じ日付が記載された『公正証書による遺言書』と『自筆による遺言書』が残
されていた場合、原則として『公正証書による遺言書』が優先される。
(2) 相続人の長男は、20年以上にわたり父の経営する会社を父とともに切り盛りし
て、会社の規模や売り上げを何倍にもするような多大な貢献をしてきた。このよ
うな事情がある場合において、相続開始後寄与分が認められることがある。
(3) 身寄りのない被相続人をかわいそうに思った近所に住む幼馴染の女性は、約3
年間にわたり被相続人の療養看護や介護に努めた。このような事情がある場合、
特別に寄与分が認められる可能性がある。
(4) 寄与分も法律で割合が定められているが、この法定の寄与分を無視した遺言書
を作成した場合、無効となる。
さて、正解はいくつあるでしょうか。
まず、寄与分とは、共同相続人の中で被相続人の事業に労務や財産を提供したり、療養看護などの方法で被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与があったと認められる場合には、のちに相続が開始した際にはその寄与分については相続財産には含まれずに寄与をした者が優先して受け取ることのできる制度と理解しましょう。とすれば、(2)相続人の長男は20年以上にわたって被相続人の経営する会社に貢献をしてていることから、寄与分として認められる可能性がありますが、(3)近所に住む幼馴染の女性は共同相続人ではないため、いくら療養看護に努めても、寄与分が認められることはないということになります。また、公正証書による遺言書と自筆による遺言書は単なる方式の違いに過ぎず、それだけで優劣はなく、同じ日付である以上はそれぞれの遺言書の内容を照らし合わせて矛盾・抵触がないかどうかで判断せざるを得ないと考えられます。さらに、(4)寄与分は、相続分や遺留分と違って法定割合が定められていません。
以上より、(1)、(3)(4)は誤りであると考えられるため、正解は(2)の1個となります。
【寄与分について】
先月の特別受益でもお話しをしましたが、寄与分についても同様に、相続まちなかステーションにご相談に来られる方々を見ていると、かなり誤解や思い込みが多い分野であると言ってもいいくらいかもしれません。
そして、そのような誤解や思い込みが相続人同士の感情的対立を招くばかりでなく、ひいては不毛・無用な相続トラブルに発展し、時間的にも金銭的にも精神的にも多大な負担を強いられるケースが急増しています。
そこで、寄与分を正しく理解していただくためのワンポイントアドバイスをしてみました。
(1)寄与分とは、共同相続人の中において、
(2)相続開始後における遺産分割の際に、その特別の寄与を相続財産から除外して
特別の寄与をなした者に優先的に受け取らせることによって、相続当事者間の公
平を実現する制度である。
(3)ただし、何が寄与分にあたるかは一応民法の条文において、被相続人の事業に
労務や財産を提供したり、療養看護などの方法で被相続人の財産の維持や増加に
ついて特別の寄与があったと認められる場合と例示されているものの、当事者の
個々の事情や経緯によって個別に判断されることがあるため、ご自分で判断され
ずに専門家への相談をお勧めします。
いますぐ相続まちなかステーションに相談する
番組出演の感想
今回のテーマは『相続の基礎知識Ⅴ ~ 寄与分 ~』でしたが、関心の高い分野でありながらも誤解や思い込みが多い分野であることから、ひとりでも多くの方が正しい認識を持っていただくとともに判断に迷った時にはご自分で判断なさらずに早めに私たち専門家に相談してもらうことの必要性についても理解していただくきっかけをご提供できたとすれば何よりであると感じました。
来月は、先ごろ最高裁判所で違憲判決が出た『婚外子(非嫡出子)の相続格差』における違憲判決を題材にしながら、地域の皆様に役立つ情報をご提供できるよう頑張ってまいります。最後になりましたが、小林和恵さん、山田博康さん、ナパサの小泉麻子さん、そしてお聞きいただいたリスナーの皆様、ありがとうございました。