桜の季節に想う ~ どんな寿命にも永遠はない ~
今年の夏は、記録的な猛暑と経験のない大雨に見舞われた異常ともいえるものでした。原因がどこにあるのかは意見が分かれるところかもしれませんが、自然の猛威を前にしたときに私たち人間がいかに無力であるかを改めて思い知らされた次第です。
毎年、この時期になるとマスコミの報道も相まって、あちこちで防災に対する関心が特に高まるようです。関東大震災が起こった月でもあり、予測できないとはいえいつか必ず起こるであろう大地震についてどのように備えるべきか、自分のこととして関心を持つ風潮になってきたのはとてもいいことだと捉えています。
そんな、防災を自分のことと捉えることの出来た方に対して、ぜひもうひとつ考えていただきたい防災対策があります。それは、いつかあなたがこの世を去った後で、残されたあなたの大切な家族を不毛で醜い災難から未然に防ぐことのできる手立てを講じる必要性と可能性についてに他なりません。
当然ですが、人が亡くなるとその意思に関わらず相続が開始します。そして、遺言がなければ法定相続となり、相続人全員の話し合いによって理解と協力を得ながら相続手続きをしていかなければならないのですが、残念ながら当事者だけで冷静に話し合いを進めながら、負担と不満を分かち合いつつ速やかに円満に解決できる人たちは減る一方となっているのが現実です。
すでに終わった介護や看護などのこれまでの様々な事情や経緯と、お寺との付き合いやお墓を守っていく責任といったこれからの負担が複雑に絡み合うわけですから、単純に法定相続分で割り切ろうとすること自体に無理があります。いま一般の方々に急増する相続トラブルも、実は起こるべくして起こっていると言っていいのかもしれません。
確かに、自分の亡き後においてどんなトラブルが起こるのか、あるいはそもそもトラブルなど起こるのかはその時になってみなければわからないといえばその通りでしょう。しかし、人が亡くなれば相続は必ず発生します。どんな人でも相続を避けることはできません。そして、相続にリスクがある以上は、リスクを直視して対策を講じておくことは十分意味があることですし、またご家族に対しても責任ある対応ではないでしょうか。『元気なうちにあなたの意思をはっきり伝えておく』というあなたのちょっとした心掛けで、相続トラブルという災難がほぼ確実に防止できることを知っていただきたいのです。
だからこそ私は、これからも高齢者の想いと家族の願いが理解できる法律専門職として、ひとりでも多くの方に『元気なうちから老後の準備を始めること』のご提案をし続けていきます。