遺留分ぐらいはもらわないと?! 残念ですがそれは遺留分の問題ではありませんよ!
今月も、3月23日(土)に無事に無料相談会を開催させていただくことができました。桜の花が開き始めてあちこちでお花見が行われていた暖かい土曜日にもかかわらず、ご予約いただいた皆様においでいただいたことにお礼申し上げます。
70代前半のご夫婦が、お揃いでご相談においでになりました。テーブルに着くやいなや、男性はすぐに『母が遺言書を書いてくれないのですが、どうにかして説得をしてもらえないでしょうか』とおっしゃるのでした。
詳しくお話しをうかがうと、男性には90歳を過ぎたお母様がいらっしゃるらしいのですが、施設にこそお入りになっているもののとてもお元気で認知症の症状もほとんど見られずに過ごされているそうです。ところが、このお母様はお若い頃に離婚をされた経験があるらしく、前夫との間にもお子さんがいらっしゃるそうです。再婚後は一切交流がないものの、自分の知らないきょうだいがいることに不安を感じた男性は数年前からお母様に遺言書を書いて欲しいとお願いしてきたそうですが、そのたびにお母様は『まだ早い』あるいは『そんな大ごとにしなくても、なるようになるから大丈夫』と言ってみたり、はては『面倒くさい』などとかわされて今日まできてしまったそうです。そんなとき、先日の朝日新聞生活面に掲載された『お財布サバイバル』の記事をご覧になって、『平塚駅前|相続・遺言の専門家として紹介された相続まちなかステーション』なら何とかしてくれるのではと考えてご相談においでになったとのことでした。
そこで、私は『遺言書を書くかどうかはご本人の意思が最も尊重されるべきである、というのが私の方針ですから、大変申し訳ありませんが説得することはできません。もしも、お母様に引き合わせいただけるようでしたら、遺言書の意義や有効性などをお話しすることはできます。お身内の方が遺言書のお話しをすると、なかなかご自分を客観的に見ることが出来ずどうしても感情が先行してしまいます。私ども専門家がお話ししたほうが、客観的でより説得力のあるお話しもできますし、お母様も冷静に耳を傾けてくださるかもしれません。そのためにも、まずは先におふたりが遺言書をお書きになるか、あるいはおふたりもこの機会にお母様とご一緒に遺言書を書かれてみてはいかがですか』とお話しました。
すると、おふたりは揃って『私たちはまだ早いですよ。そんなに財産があるわけでもないし』とおっしゃるではありませんか。正直なところ、私は『やっぱり』と感じずにはいられませんでした。
残念ながら、親や配偶者に遺言を書いてほしいという方に限って、ご自分は書かない、あるいは書きたくないという方が思いのほか多いのが現実です。まして、今回ご相談においでになったご夫婦は70歳を過ぎており、私に言わせれば遺言を書くには早いどころかちょうどいいタイミングです。財産があるかどうかではなく、きちんとした遺言があれば不毛で無用な相続トラブルを回避し、速やかに円満に相続手続きができるということがまだまだ一般の方には理解されていないことに改めて気づかされた思いでした。
最後に、私は『お母様がなかなか遺言書を書いてくれないのは、おそらくいまのおふたりの気持ちとおなじではないでしょうか。他人の心を動かすためには、まずは自分自身が変わらなければ難しいでしょう。私なら、皆さんのご要望を実現するための充分なお手伝いをお約束できます。』とお答えして面談を終了しました。
まだまだ日本人にとって遺言を書くということは一般的なことではないのかもしれません。しかし、きちんとした遺言さえあれば、不毛で無用な相続トラブルはほぼ回避できますし、安心して日常生活を送ることができるということをひとりでも多くの方に知っていただきたい。だからこそ、私自身もすでに42歳で遺言書を書きました。弊事務所にお越しいただければ、私の遺言原案を実際にお見せしながら、不毛な争いを防ぎながら自分自身の思いを伝える遺言書とはどのようなものかをゆっくりご説明させていただきます。
これからも私は、遺言者の想いを理解できる相続・遺言の法律専門職として、ひとりでも多くの方に相続を争続にさせないために自らの体験を踏まえた『争わないための遺言書』のご提案をし続けていきます。