コラム
相続トラブルも予防に勝る良薬なし! 病気も相続も早めの相談が大切です!
2012年10月4日 公開 / 2018年9月21日更新
今月も無事に『相続・遺言に関する無料相談会』を終えることができました。台風が接近しており天候が不安な土曜日にもかかわらず、ご予約いただいた皆様においでいただいたことにお礼申し上げます。
60代半ばの姉と妹というおふたりが連れだって、かなり疲労困憊したご様子でご相談においでになりました。
詳しく伺うと、おふたりには実はもうひとり姉がおり三姉妹らしいのですが、長姉は20代のころから宗教にのめりこんで家を出て行ってしまったそうです。たまに帰ってきても、家族に入信を勧めるばかりで、自分の意に沿わないと怒ったようにまた出て行ってしまう、そんなことの繰り返しで40年近くも歳月が流れてしまったとのでした。
二人の妹たちからすれば、結婚もせず親の面倒を見るわけでもなく好き勝手なことをしている姉が、いつか父が亡くなった後の相続でいろいろと面倒なことを言ってこられてはたまらないとの思いから、ずいぶん前から父親に対し遺言書を書いてほしいとお願いしてきたようですが、残念ながら父親は、『まだ早い』『そのうち考える』あるいは『この世に三人しかいない姉妹なんだし、子供のころを思い出して仲良くやればいいだろう』などとおっしゃって、とうとう遺言書を書いてくれることなく3か月ほど前にこの世を去られたそうです。
さて、お父様の四十九日も無事に終わったので、相続手続きをしようかと思っていた矢先に、残念ながら2人の妹たちの不安が見事に的中してしまいました。何と、長姉は自分自身の法定相続分どころか、『自分は結婚をしなかったので、結婚式相当額を上乗せしてもらわなければ割に合わない』というような主張を始めたのでした。妹たちからすれば、親の面倒も見ず好き勝手なことをしてきたと思っているわけですから、当事者同士は感情的に対立しており、当然冷静な話し合いなどできなかったそうです。いくつかの無料相談にも行かれたようですが、『当事者でよく話し合わないとだめですよ』などのピントのずれた回答ばかりで解決できずに困り果てていたところ、藁をもすがる思いで私の無料相談会においでになられたのでした。
そこで、私は『遺言がないのですから、相続権は三姉妹全員にあることは否定するわけにはいきません。どうしても話し合いがつかなければ裁判所での解決も選択肢ですが、人間関係は決定的に壊れてしまうでしょうし、傷つけあうだけで誰も幸せになることはないですよ。私なら、相続人全員が少しずつ不満を引き受けて、話し合いで円満に解決できるような方策をご提案できます』とお答えしました。
もしも、お父様が遺言書を書いてくれなくて困っていた何年か前に私がこの方たちのご相談に乗らせていただいていたら、あるいはお父様に引き合わせていただいていたら、と思うと何とも気の毒でならず、ふたりの妹さんたちが、単なる不安ではなくもう一歩行動を起こしていてくれたらと思うと残念でなりませんでした。
『予防に勝る治療・良薬なし』と言われますが、これは相続にもよくあてはまるのです。人間同士のトラブルの主要原因である金銭問題と感情問題が複雑にぶつかり合うのがまさに相続の場面なのです。今回もまた、『遺言書さえあればこんなトラブルにはならなかっただろうに』と断言できる事例でした。
これからも私は、真の相続・遺言の法律専門職としてこの地域の一般市民の相続・遺言に関する誤解や不安を可能な限り解きほぐして、相続を争続にしないための有益で具体的な予防策をご提供し続けていきます。
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