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うちの子どもたちに限って?! 相続トラブルは法律論だけでは解決できません!

加藤俊光

加藤俊光

テーマ:遺言のすすめ【平塚|相続 遺言 相談窓口】

 今年の夏以降、毎月のように様々な団体の学習会等で講師を務めさせていただいております。相続・遺言に関心を持たれる方が増加していることを実感しており、何かひとつでも参加された方のご参考になればと思いながら、喜んでお引き受けしている次第です。

 もっとも、多くの方は『急増する相続トラブル』をテーマにお話をさせていただいても、残念ながらまだまだ『たいした財産もないのにそんな大げさな』あるいは『うちの子どもたちに限って相続争いをするとは思えない』とおっしゃる方が多数おいでになるのも事実です。また、『法律どおりに分ければ相続トラブルが起きないのではないか』と誤解をなさっている方が多いのも現実です。

 確かに、法律をみれば相続人となる人や各相続人の相続分が規定されていることがわかります。そして、遺言がない場合においてはこの法定相続分を参考にしながら誰が何を相続するかの話し合い(遺産分割協議)を進めていくというのが一般的です。

 しかし、相続実務を経験した私から見ると、この法定相続分は単なる目安にしかならないのが現実です。十人十色という四字熟語があるように、遺産分割における当事者間の協議では様々な要望が出てくることがあるのです。例えば、①結婚をしなかったので、私には他の相続人同様の結婚式費用相当額を上乗せしてほしい、②たびたび借金をして被相続人である父に尻拭いをしてもらっていたのだから相続分は認められない、あるいは③長男の妻として介護の負担を一手に引き受けたのだから、寄与的行為にそれなりの配慮がなければハンコは押せない、など当事者にしかわからない感情や経緯が出てくることがあります。当然ですが、このようなときにどう対処すべきかは法律には規定がなく、当事者で話し合って解決策を見出すしかないのです。

 思うに、相続は残された財産をどのように分けるかという問題に加えて、さらに相続人同士の人間関係や経緯を調整するかという側面を併せ持っています。

 とすれば、法律論だけを説明し続けても相続当事者の理解は得られず、相続人全員の要望を取捨選択しながら落としどころを探っていくという作業が必要になってきます。そして、この作業こそが実は遺産分割協議にほかならないのです。

 そして、遺産分割協議を速やかに円満に行うための秘訣は、遺産分割協議を相続人全員が満足するための場と捉えるのではなく、相続人全員が少しずつ不満を引き受けるための場と捉えることが必要です。特に、相続財産が土地建物と預貯金のみというケースにおいて、相続人全員が自らの法定相続分について絶対に譲歩しないのであれば、速やかに円満に解決することは不可能ですし、最終的には土地建物を売って分けるしかないという悲惨な結末になることもあるのです。もちろん、相続人全員が笑顔で満足できることが理想的な円満解決なのかもしれませんが、そうでなくとも『多少不満は残るけれどもまあ仕方ないな』と思えるような内容で相続人全員が合意できることも十分円満解決と言えるのではないかと考えています。

 そのためには、相続人の皆さんだけで話し合いをするのではなく、被相続人の方がすべての相続人に対して十分な配慮をした遺言を作成し、かつ遺言内容の実現(遺言執行)を客観的な第三者である専門家に委託することが必要です。相続人の皆さんだけで話し合いをしても、どうしても感情が先行してしまい冷静に客観的に対応できないものです。私ども専門家が介入させていただいたほうが相続人の皆さんもきっと少しずつ不満を引き受けておさめてくださるのではないでしょうか。

 私は、相続人同士が何年にもわたって裁判所で相続争いをすることほど無益なことはないと思っています。人間関係を決定的に壊してしまうだけであり、何もいいことなどありません。『うちの子どもたちに限って?!』と思われるお気持ちも理解できなくはないのですが、実際に相続トラブルになってしまった方々は『まさかこんなことになるとは思わなかった。きちんと遺言を書いておいてほしかった』とおっしゃっているのが現実なのです。ご自身の亡き後で、お子さんたちを不毛な相続トラブルに巻き込まないための予防策として、ぜひ遺言書の活用をお考えになられることをお勧めします。

 これからも私は、ひとりでも多くの方に『争わないための遺言書』のご提案をし続けていきます。

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加藤俊光
専門家

加藤俊光(行政書士)

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

単身者・子どものいない夫婦世帯が人生の最終章で直面する介護や医療、金銭管理、死後の事務手続、お墓、ペットなどの切実な問題に寄り添い解決。地元の在宅医療・介護の専門職と密接な連携が取れる体制にも自信あり

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