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そのうちきっと何とかなるだろう?! 決して時間は解決してくれない遺産分割問題 その2

加藤俊光

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テーマ:円満解決の極意【相続相談の現場から】

 相続手続はいつまでにやらなければならないのでしょうか?このような質問を受けることがたびたびあります。

 まず、相続を放棄するという場合には相続開始(被相続人が亡くなった日)から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
 
 また、相続税を納める必要がある方は、相続開始(被相続人が亡くなった日)から10か月以内にしなければならないという決まりがあります。

 もっとも私の経験では、現状においては相続税を納めなければならないような事例は全体の3~4パーセントであると認識しています。昨年、政府税制調査会でも相続税の課税を強化する方針が示されましたがその後進展が見られないため、現時点では100人の方が亡くなっても相続税を納めなければならないのはわずか3~4人ということになるのです。

 これに対して、誰がどの財産を相続するかという遺産分割協議については、実は法律上は期限がありません。事実、被相続人が亡くなってから2~3年後に遺産分割協議が成立するという事例も決して珍しくありません。

 ただし、いくら遺産分割協議についての期限がないとはいえ、不動産の名義変更をいつまでもしないでおくことは絶対に避けていただきたいのです。

 確かに、相続登記(例えば土地・建物の名義人である祖父が亡くなった場合に相続を原因とした所有権移転登記をすること)をしなくても固定資産税さえ滞納しなければその土地・建物には住み続けることができます。

 しかし、相続登記をせずにそのまま放置しておくと、私たちの意思にかかわらず二重三重に相続は発生し続けるのです。先の例で言えば、おじいさんが亡くなって、息子や娘が6~7人おり、その息子や娘たちにそれぞれ子(おじいさんから見れば孫)がある場合においては、おじいさんが亡くなってから30年もすれば相続人は20人近くになることもあり得るのです。人間関係はどんどん希薄になっていくのに、相続人はどんどん増え続けるというおそろしいことが起こるのです。

 事実私も、昭和25年から一度も権利関係に動きのない土地・建物の登記簿謄本(登記事項証明書)を見たことがあります。おそらく相続登記が一度もなされなかったためと思われますが、はたしてこの土地の相続人は現在何人になっているのだろうか、そして今後も相続人が増え続けて後々とんでもないトラブルになるのだろうかと思うととても不安な気持ちを抑えることができず、すぐに遺産分割協議に入って現在の権利関係と登記記録を一致させるように勧めました。

 相続は人間関係の調整の側面を持っていますが、人間関係のトラブルは時間の経過によって自然に解決に向かわせてくれることもあるのかもしれません。

 しかし、相続だけは決して時間が解決してくれることはありません。むしろ、時間の経過によってさらに複雑な深刻なトラブルを引き起こすことになる可能性があるのです。

 相続において一番よくないのは放置することです。相続が開始したときは、必ず専門家に相談されることをお勧めいたします。

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加藤俊光
専門家

加藤俊光(行政書士)

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

単身者・子どものいない夫婦世帯が人生の最終章で直面する介護や医療、金銭管理、死後の事務手続、お墓、ペットなどの切実な問題に寄り添い解決。地元の在宅医療・介護の専門職と密接な連携が取れる体制にも自信あり

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