遺産相続や相続手続にまつわるあれこれ　あなたは誤解や思い込みをしていませんか？

　今月も無事に『相続・遺言に関する無料相談会』を終えることができました。蒸し暑い三連休の中日にもかかわらず、ご予約いただいた皆様においでいただいたことにお礼申し上げます。

　遺言書ブームと言われていますが、弊事務所にも自筆証書遺言をお持ちになってご相談においでになる方が時々おられます。急増する相続トラブル、特に誰がどの遺産を相続するかという、遺産分割協議におけるトラブルがごく普通の一般市民の間でも珍しくない現実の中で、遺言書に関心を持たれる方は今後も増え続けるであろうと捉えています。

　もっとも、相続のプロとしてとても気がかりなことがあります。それは、遺言書が有効か無効かということと、遺言書の内容通りに執行できるかどうか（遺言書に書かれたとおりに遺産を分けられるかどうか）は全く別の話なのですが、一般の方はこの点について誤解されているか、あるいはご存じない方が大半であるということです。

　例えば、母が『全財産を長男Aに相続させる』という自筆証書遺言を残していたとします。母が、その全文、日付及び氏名を自書し、押印されていれば法的には有効な遺言書となります。お母さんが亡くなられた後に、相続人は直ちに裁判所で検認をしてもらい遺言執行という手続きに入るのが普通です。

　しかし、この遺言書をそのまま用いて相続財産である土地・建物の名義を必ず長男A名義に変更できるかというと、実はできないというケースも結構あり得ることなのです。遺言書としては有効であっても、この遺言書をそのまま相続登記に使うことができず、結局は相続人全員で遺産分割協議書を作成しなければならず、最後には相続人同士でトラブルになってしまう事例が後を絶ちません。

　遺言書は遺言者の想いが込められた最後の手紙です。せっかく遺言者の精一杯の想いが織り込まれた手紙が無駄なものになってしまうことを何としても避けたい、その想いで私は自筆証書遺言よりも公正証書遺言をお勧めしています。作成の段階で、相続人と相続財産を綿密に調査して、内容について公証人の判断を仰いで作成しておけば、せっかく書かれた遺言書が無効になってしまったりすることはほぼありえないですし、また遺言執行（遺言書に書かれた内容のとおりに実現すること）もほぼ確実になすことができると断言できます。時折、弊事務所に持ち込まれた遺言書が無駄なものとなってしまい、遺産分割協議で相続人が醜い不毛な争いをする場に遭遇するたびにやりきれない思いをしています。

　これからも、私は一般市民の方の相続・遺言に対する誤解や思い込みを解きほぐして、適切な助言をし続けることを自らの責務であると考えて、毎月一回の定例無料相談会を開催し続けていきます。