【第1部】2028年10月改正予定の「雇用保険の週10時間適用」~新たに500万人が対象となる法改正~
はじめに
日本の企業経営において、今の人手不足は深刻です。
「採用活動を行っても応募が集まらない」、「せっかく採用した若手人材が早期離職してしまう」といったお悩みを、多くの経営者様から伺います。
では、世界の労働環境はどうか
世界における労働施策や雇用環境の動向を、客観的なデータに基づいて把握することで、今の現状を客観的に判断できるかもしれません。
令和8年9月、厚生労働省は最新の「海外情勢報告」を公表しました。
この報告書は、世界各国における労働施策や雇用情勢を取りまとめたレポートであり、その目的はグローバルな労働課題の変遷を体系的に把握し、日本の労働施策の立案や企業の労働環境整備・経営判断の参考にすることにあります。
今回のコラムは、このレポートに基づき、日本と海外の経済・雇用指標を比較・分析することで、日本企業が直面している労働環境を整理します。
世界と日本の比較
各国(日本、米国、フランス、ドイツ、中国、ベトナム)の直近の主要経済・雇用指標(実質GDP成長率、失業率)の比較は以下の通りです。
| 国・地域 | 実質GDP成長率(%) | 失業率(%) |
|---|---|---|
| 日本 | 0.9%(2025年実績推計) | 2.5%(完全失業率) |
| アメリカ | 2.1%(2025年) | 4.3%(2025年平均) |
| フランス | 0.9%(2025年) | 7.4%(15~64歳) |
| ドイツ | 0.3%(2025年) | 3.8%(ILO基準・2025年) |
| 中国 | 5.0%(2025年) | 5.2%(都市部調査失業率) |
| ベトナム | 8.0%(2025年) | 2.2%(2025年) |
日本は欧米諸国と比較して実質GDP成長率が低位を続けている一方で、失業率は2.5%という世界的にも極めて低い水準を維持しています。
フランスやアメリカの失業率と比較しても、日本の失業率の低さは際立っています。
この「低失業率」は、一見すると雇用が安定している好ましい状態に思えますが、「働きたい人はすでに働いている状態」とも言えます。つまり、求職者の絶対数が不足している中で労働者を奪い合う「構造的人手不足」であることを示唆しています。
日本企業が置かれている労働市場の現状
日本では、従来の採用・雇用スタイルを継続することに限界がきていると思います。
求職者に対して有利な「売り手市場」が定着した現在では、従来の求人広告を出して応募を待つ手法や、新卒一括採用・長期雇用の慣行に沿った経営姿勢では、優秀な人材の確保どころか事業の維持も困難になります。
今後の労働市場で企業が生き残るためには、多様な働き手を活かす労務環境の構築が不可欠です。具体的には、高齢者や育児・介護中の社員、外国人労働者、多様なキャリアを持つ人材が、それぞれのライフステージに合わせて柔軟に力を発揮できる労働条件の整備が求められます。
単に給与水準を引き上げるだけでなく、労働時間の柔軟化、評価制度の見直し、ハラスメント防止対策など、働く場所としての魅力を高める「選ばれる職場づくり」を推進することが、企業経営における課題ともいえます。
まとめ
今回のポイントは以下の通りです。
【今回のポイント】
- 令和8年9月公表の厚生労働省「海外情勢報告」は、グローバルな労働課題を把握し、日本の雇用施策や企業経営の参考とすることを目的としている
- 日本は海外主要国と比較して実質GDP成長率が緩やかである一方、失業率は世界的にも低い水準にあり、構造的な人手不足に直面している
- 従来の採用スタイルは限界を迎えており、多様な人材が活躍できる柔軟な労務環境の構築が急務である
第2部では、「高齢者・若年・柔軟な働き方の比較」をテーマに、各国の取り組み事例と日本企業への示唆について解説します。
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