長い不登校の間「ピアノが弾きたい」という気持ちに応える指導
「楽譜は読ませることはされませんか」
——保護者から、あるいは自分自身のなかから、そう問いが浮かんだことはありませんか。
早く読めるようにしなければ、この先が不安。
でも、読ませることばかりにすると、子どもが鍵盤から離れていく気がする。
どちらが正解なのか、答えが出ないままレッスンを続けている先生は少なくないのではないでしょうか。
実は、問いの立て方が少しずれていると、正解はいつまでも見えてこないのです。
1. 読ませるか・読ませないか、ではない
「読ませる」か「読ませない」かで悩むとき、私たちは読譜を「やるかやらないか」の二者択一で捉えがちです。
けれど現場で起きているのは、もう少し別の話なのです。
どの子も、いつかは楽譜という記号と向き合う。
問題は、その「いつ」と「どの順番で」と「どの意味で扱うか」。
つまり、読譜は目的ではなく、育てる道具なのです。
目的にしてしまうと、読めること自体がゴールになり、音楽と子どもが結びつく前に、記号の訓練で終わってしまいます。
2. 「いつ・どの子に・どの形で」の設計の話
子どもによって、耳で覚えるのが先の子もいれば、目で追いたがる子もいます。
一律に「何歳から読ませる」と決めるのではなく、今のこの子に、どの形で読譜を渡すかを考える。
それが設計です。
読ませるか否かではなく、「今、この子の状態に対して、読譜をどの程度・どのタイミングで入れるか」を、レッスンごとに微調整する。
そう捉えると、保護者に説明するときも、「読ませていない」のではなく「今はこういう段階で、こういう形で触れています」と、意図を言葉にしやすくなりますよ。
3. 先に結ぶべきは、音楽との関係
多くの先生が無意識に大切にしているのは、「この曲、好き」「弾きたい」という気持ちです。
その気持ちが先にあって、はじめて「もっとうまく弾きたい」「楽譜を見て弾けるようになりたい」が意味を持つ。
先に音楽と関係を結ばせ、そのあとで記号と結ぶ。
順番をこう置くかどうかで、読譜指導の質が変わります。
読ませるか読ませないかで悩む前に、いま子どもが音楽とどんな関係にいるかを観察してみてください。
その視点があるだけで、答えの引き出しが増えていきます。
まとめ
読譜を「するかしないか」で考えている限り、正解は見つかりません。
問いを「いつ、どの状態の子に、どの形で読譜を渡すか」にずらす。
その設計の視点を持つ先生が一人でも増えれば、子どもも保護者も、もう少し楽になると思います。



