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子どもたちの多彩な才能を輝かせ、差別や偏見のない社会の実現を目指す

独自のメソッドでピアノ講師を支える音楽教育家

三上緑

カラフルコミュニケーション 三上緑さん
緑音楽教室 発表会イメージ

#chapter1

生徒との関わり方に悩む指導者たちに、独自の「音いろはメソッド」を伝授

 「ピアノのレッスンを通して、敏感すぎて疲れやすかったり、自己肯定感が低く打たれ弱かったり、発達に特性のある子どもたちを数多く見てきました。不得手なことや難しさがある子でも、安心できる環境に身を置き、信頼できる指導者が知的好奇心を刺激すれば、自分らしさを発見して、生き生きと輝くことができます」

 そう呼び掛けるのは、2023年に「カラフルエデュ協会」を立ち上げた、音楽教育家でピアノ講師の三上緑さん。障害のある子も、ない子も一緒に学ぶ「インクルーシブ音楽教育」により、子どもたちの多彩な才能を引き出し、差別や偏見のない豊かな社会の実現を目指しています。

 「音楽教室の講師の方に向けた支援にも力を入れています。かつての私がそうだったように、独自のカラーを持つ生徒たちとどう関わっていけばいいのか分からず、戸惑う方がたくさんいます。1人で悩んでいる方の道しるべになればと、子どもの『今』を肯定し、個性を伸ばす教育法『音いろはメソッド』のオンライン講座を開講しています」

 三上さんは、自身が積み上げてきた知識や技術をもとにプログラムを構築。3カ月で“学べる子”へと導く「超導入期セオリー」、教本を超えた自分だけの指導法を確立する「マイメソッド思考法」、指導者として迷うことのない自信を養う「水平思考の実践」と、三つのステップを用意しており、受講生は自身が強化したいポイントなどに合わせて選ぶことができます。

 現在、東北から九州まで全国約40人の講師が受講。グループ勉強会も月3回のペースで開催し、それぞれが抱える課題や成功体験などを共有することで、お互いに知見を深め、実践に役立てているそうです。

#chapter2

試行錯誤しながら数多くの生徒と向き合う中で、音楽が持つ力を実感

 三上さんは、チャットツールのLINEを使って受講生をサポート。「生徒が突然泣き出し帰ってしまった」「保護者からの問い合わせに何と返信しよう」など、リアルタイムで寄せられる声に、時間のある限り丁寧にコメントしています。

 「講師という職業は意外と孤独なんです。気軽に相談できる人がなく、常に生徒や保護者の方の視線を感じながら、『間違ってはいけない』と戦っています。私が客観的な立場からアドバイスをすることで生徒との接し方のヒントをつかみ、リラックスした気持ちでレッスンに臨んでもらえたら、うれしいですね」

 三上さんが講師を支える活動を続けているのは、自身がさまざまな背景を持つ生徒たちと出会い、試行錯誤しながらも、かけがえのない経験をたくさんしてきたから。音楽大学在学中からピアノの出張レッスンを始め、最初に受け持ったのが、とても繊細で心が折れやすく、長い間学校に通えていない女の子でした。

 「『この子に笑顔になってもらうには、どうしたらいいのだろう?』と考え、お母さまに普段の様子を尋ねたり、専門書を読んだり。懸命に向き合ううちに、1週間に1度のレッスンを心待ちにしていると知り、明るい表情を見せてくれるようになったのです。この時の笑顔が私の原点であり、糧となっています」

 親身に寄り添う姿勢から口コミで生徒の数が増えていき、大学を卒業する頃には約40人を担当していた三上さん。音楽が持つ力を実感し、その素晴らしさを広く伝えたいとの思いを強くしたと言います。

カラフルコミュニケーション 三上緑さんと受講者の皆さん

#chapter3

一人一人に目を向けて可能性を伸ばすことで、子どもたちが大きく羽ばたくための原動力に

 「実は私も『生きづらさ』を抱える子どもの親です。長男の長い不登校を経験し、保護者の方の子育てに対する不安などがよく分かります。子どもたちは、自分の『居場所』を探しています。そんな切実な願いに応えるためにも、講師のみなさんの協力が必要だと思いました」

 35年以上に渡りピアノ教室を主宰し、数々の生徒を迎え入れてきた三上さんですが、いざ自分の子どもとなると話は別だったとか。「息子に対し、厳しい言葉を使ってしまうこともありました。『親として、何とかしてあげたい』という一心で、自治体の相談窓口や児童精神科などを訪れる中で、メンタル面からアプローチする方法を知りました」

 児童心理や発達障害について理論的に学び、心を細やかにケアする過程で、長男は徐々に変化。自身の体験を共有したいと、日々のレッスンと子育てを通じて得た経験知をもとに、2020年に「カラフルエデュ協会」の前身となる「カラフルコミュニケーション®︎」を設立。ピアノ講師のための講座を実施するようになりました。

 「音いろはメソッド」では、これまで50人の履修生を輩出。今後は「塾や家庭教師など音楽教室以外の分野にも提供していきたい」と意欲を見せます。

 「近年は、習い事をはじめ色々な場面で、関わり方に配慮が必要な子の存在が目立つようになりました。しかし、どんな子にも得意分野があります。一人一人に目を向けて可能性を引き出し、伸ばしてあげることで、将来、子どもたちが大きく羽ばたくための原動力になると信じています」

(取材年月:2023年1月)

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専門家プロフィール

三上緑

独自のメソッドでピアノ講師を支える音楽教育家

三上緑プロ

音楽教育家

一般社団法人カラフルエデュ協会

指導者に向け、子どもたちのやる気を引き出し、得意を伸ばす独自の指導法「音いろはメソッド」を伝えている。勉強会や個別相談なども実施し、生徒との関わり方に悩む指導者たちの理想実現サポートを行う。

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