好奇心の 強い子どもに応えるピアノ指導
次男の中高生活の中で、私が深く実感したことがあります。
「わかんない指導」は、子どもに何を残すのか?
ある週末、日曜まで部活が続き、帰宅した彼はクタクタで、見るからにヨレヨレの様子でした。
それもそのはず、彼は中学から管弦楽部に入り、小学校の頃から続けている打楽器を楽しんでいます。年に一度の定期演奏会に向けて、いよいよ追い込みの時期。連日、練習がハードになるのは当然です。
でも、その疲れ方には、ちょっとした“質”の違いがあるようでした。
何が違うのだろう?と思っていたら、彼がぽつりと口にした言葉がありました。
「なんかさ、顧問の先生、ぜんぜんほめないんだよね。」
「まだまだだね、って言うばっかり。」
「悪くないんじゃない?って言われても、どうしたらいいか分かんないし。」
その言葉に、ハッとしました。
感覚的なものこそ、具体的に伝える技術を
つまり、「どこが」「どう良くて」「何をどうすればもっと良くなるのか」が、まったく見えない。
「だから何?どうしたらいいの?」と、本人ももやもやしたまま練習を終えてしまう…。
一方で、たまに来る音大生の指導員の方は、こうではないようです。
「このリズムはさ、数学で言うとさ…」
「あ、今の音、すごくいい音出てるよ!」
そんなふうに、彼の世界と言葉を使って、丁寧に伝えてくれる。
その上で、しっかりと具体的にアドバイスしてくれるから、終わったあとも「もっと考えてみたいな」
「もうちょっとやってみたい」と自然に思えるようです。
なるほど。
帰ってきたときの表情の違い、話し方のトーンの違い。
全部、ここにあったのかと腑に落ちました。
言葉ひとつで、子どもの未来が変わる
音楽って、形に残らないもの。
だからこそ、子どもにとっては「イメージできるかどうか」が、すごく大きな鍵になるんですよね。
たとえば「クレッシェンド(だんだん大きく)」と指示されても、
「どこから?どこまで?」「どのくらい大きく?」「どういう音を“大きい”と感じるのか」
それがはっきりとイメージできないと、ただただ混乱してしまいます。
しかも、テンポ感や全体の音の流れで、「大きさ」の感じ方も変わってしまう。
だからこそ、こういった感覚的なことこそ、できるだけ具体的に、
わかりやすく伝える必要があるのだと、改めて感じました。
そしてもう一つ、忘れてはいけないこと。
「わかんないままの指導」で頑張らせると、
終わったあとに、深い“疲労感”だけが残ってしまう。
本人も「なんだか全然できなかった」と落ち込むし、「次が楽しみ」にならない。
この“後味の悪さ”が、案外大きなダメージになるんです。
「やっぱりな…」と、指導者としての自分にも、ちょっと胸が痛くなりました。
子どもにとって“伝わる言葉”を選ぶこと。
これって、指導者にとって本当に大切な技術のひとつかもしれません。
心に届く言葉をかけられているか?
イメージできる世界を一緒に描けているか?
私たちも、常に自分の言葉を見直していきたいですね。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
現場で子どもたちと向き合う先生方に、少しでも届きますように。



