【支援事例】売上が伸びても資金繰りが苦しい家族経営の経理改善

平岡誠司

平岡誠司


「売上は伸びているのに、なぜかいつもお金が足りない…」

家族経営の経営者の方から、こうした資金繰りのご相談をいただくことがあります。銀行から借りても借りても楽にならず、通帳を毎日確認しながら感覚でやりくりしている。そんな状態に、心当たりはないでしょうか?

今回は、急成長の裏側で経理と経営管理が追いつかなくなっていた家族経営の会社が、約2年かけて「数字を見ながら判断できる会社」へ変わっていった支援事例をご紹介します。

「借りても足りない」家族経営の資金繰りの悩み

実はこういったケースは決して特別なものではありません。ご相談くださったのは、小売・飲食・物流関連など複数の事業を展開する家族経営の小規模事業者でした。個人事業から始まり、その後法人も設立し、事業規模とお金の流れが急速に大きくなっている最中でした。

経営者ご夫婦は現場の仕事が中心で、社内に管理部門を任せられる人材はいません。経理未経験のスタッフが献身的に対応していましたが、通帳管理、伝票整理、労務、支払い、入金確認と、慣れない仕事に追われる毎日でした。

会計処理も遅れがちで、試算表が数か月遅れることもありました。経営者が正しい数字を見て判断できない状態です。個人事業と法人の取引が入り組み、複数の通帳、電子決済、売掛金、買掛金、在庫の流れが複雑に絡み合っていました。

経営者は部門ごとの通帳履歴を毎日確認しながら資金繰りをしていましたが、会社全体としてお金がどう動いているのかはつかめません。記帳代行を依頼していた税理士側でも処理が追いつかず、誰も正しい数字をすぐに確認できない状況でした。

ご本人も「何から手を付ければよいのか分からない」とおっしゃっていましたが、課題がはっきり言葉になっているというより、経営全体にモヤモヤした不安が広がっている様子です。

実はこのモヤモヤこそ、家族経営の現場で最もよく出会う「管理の限界」サインだと私は感じています。

会計freee導入の前に、業務監査と設計から始めた理由

意外に思われるかもしれませんが、最初に取りかかったのはシステムの導入作業ではありません。私が特に時間をかけたのは、導入「前」の準備でした。

この会社が私を選んでくださったのは、会計freee認定アドバイザーとしての知識だけでなく、元経営者としての実体験や、破綻寸前に陥った老舗企業を立て直した経験に期待してくださったからだと思います。それだけ、現場に入って実践的に整理する支援が求められていました。

私たち平岡商店では、まず業務監査と設計を行います。法人と個人で入り組んでいた業務の流れ、お金の流れ、通帳、決済手段、証票、会計処理までの流れを、一つずつ整理していきました。

そのうえで、現場の段取りやスタッフの習熟度を見ながら、あえてデジタル化しない領域も設定しました。すべてを一気にデジタル化すればよいわけではないからです。

現場の段取りには、その会社ならではの理由や強みがあります。そこを無視してシステムだけを入れると、デジタルでつながってしまうことによって、かえって混乱が大きくなってしまうのです。

経理未経験のスタッフが自計化するまでの伴走支援

ここで大切にしたのが、自計化です。自計化とは、記帳や月次試算表の作成を会計事務所任せにせず、自分たちの手で数字を作れるようになることです。

会計freeeの導入後は、ハンズオンで伴走支援を行いました。スタッフの習熟度に応じて、代行、補佐、助言を組み合わせながら進めます。簿記の勉強を一方的に求めるのではなく、実際の業務を一緒に確認しながら、なぜその作業が必要なのか、入力した数字がどう経営判断につながるのかを繰り返し伝えました。

販売管理システムの運用も見直し、売上、仕入、在庫、売掛金、買掛金の管理方法を整理しました。会計システムとの連携も整え、正確なデータが作れる状態をつくっています。

数字の土台が整ってからは、部門別損益、業績予想、資金繰り予想を行い、損益や資金繰りを改善する施策を提案・実行しました。急速な拡大に伴う資金需要については銀行折衝も補佐し、決算書の内容や実際の業務・資金の流れを金融機関に丁寧に説明しています。

経営者の方には、月次試算表をもとにビジネスストレングスコーチングを行いました。ビジネスストレングスコーチングとは、会計などのビジネスデータを使い、経営者との対話を通じて会社の強みを活かした判断を支援する、平岡商店独自のコーチングのことです。

こうして、損益・資金繰り・投資判断を一緒に確認するうちに、通帳を見ながら感覚的に資金繰りをしていた状態から、freeeの数字を見ながら経営状況を語り合える状態へと次第に変わっていきました。

1年でリアルタイム経理、2年でリアルタイム経営へ

取り組みの結果からお伝えすると、1年でリアルタイム経理、2年でリアルタイム経営に近い状態を実現できたと言えます。リアルタイム経営とは、会計データを早く正確に整えることで、経営者がほぼ今の数字を見ながら判断できる経営のことです。

経理未経験だったスタッフだけで自計化できるようになり、月次決算も早期化しました。複数あった通帳や入出金経路も整理され、混乱していた経理業務は大きく改善しています。

日常的な経理作業や月次試算表を自分たちで正確に仕上げられるようになり、資金繰りや業績推移もリアルタイムに近い形で把握できるようになりました。経営者が数字を見ながら判断できる会社に変わったのです。

変化は数字の面だけではありません。以前は日々の仕事を回すことで精一杯でしたが、数字が見えるようになると、経営者もスタッフも「この作業が何につながっているのか」を理解できるようになりました。

経理担当の方も、単に入力して終わりではなく、自分たちの仕事が資金繰りや経営判断につながっていることを実感されるようになりました。数字を見ながら会話が生まれ、現場から小さな気づきや改善の声が出るようになったことが、私には何より印象的でした。

クラウド会計は「導入すれば整う」ものではありません

この事例から、同じ悩みを持つ方にお伝えしたいことがあります。会計freeeなどのクラウド会計は、導入すれば自動的に経理が整うものではありません。むしろ導入前の業務監査や設計を間違えると、デジタルでつながるからこそ混乱が大きくなることがあります。

どんなに小さな会社でも、現場にはその会社独自の段取りがあります。非効率に見えることもありますが、その会社の強みや事業性と結びついていることも少なくありません。大切なのは一律のデジタル化ではなく、現場の流れを正しく見極めたうえで、業務、資金、会計の流れを設計することです。

自計化も、単に会計事務所の仕事を事業者に移すことではありません。自分たちで数字を作れるようになるからこそ、経営者が会社の状態を早く把握し、次の判断ができるようになります。そのためには、導入後のアフターフォローと、経営管理レベルを高める伴走支援が欠かせません。

なお、この伴走支援の取り組みは会計freeeオフィシャルサイトでも事例として紹介されました。詳しくはこちらをご覧ください(https://cw-bsc.com/news/data-coaching-case-hiraoka/)。

売上が伸びているのに資金繰りが苦しいのは、頑張りが足りないからではなく、業務とお金と会計の流れがまだ整っていないだけかもしれません。

まとめ

経理が整うことは、単なる事務作業の改善ではなく、経営者が自分の会社をあらためて理解し直すことだと私は思っています。数字が見える会社は、必ず次の一手を考えられる会社になります。

・売上は伸びているのに、資金繰りがいつも苦しいと感じている方
・会計freeeなどクラウド会計の導入や運用がうまく進んでいない方
・経理未経験のスタッフしかおらず、月次の数字が遅れがちな方


株式会社平岡商店は横浜を拠点に東京・神奈川・広島で活動し、会計freeeとビジネスストレングスコーチングを軸に、家族経営の資金繰り改善・経理改善を伴走支援しています。

「何から手を付ければよいか分からない」という段階のご相談で構いません。まずはお気軽にお問い合わせください(https://cw-bsc.com/)。

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平岡誠司
専門家

平岡誠司(小規模事業者向け経営支援家)

株式会社平岡商店

経営者の実践経験を活かし、経理の見える化・日繰り・在庫管理を軸に、家族経営の経営管理の仕組みづくりを実行支援します。現場の気づきを経営判断につなげ、“らしさ”をいかした経営を一緒に育てていきます。

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