活動的な高齢者の自立支援に~屋外用移動支援ロボットの導入メリットと注意点

猪野由紀夫

猪野由紀夫

テーマ:介護

ろぼっと1

介護業界を変える介護ロボットの効果

(概要)
高齢になればなるほど、体力が衰えるのは当然のことです。体力が衰えればどうしても行動範囲は狭くなってしまいます。
ですが、ご高齢者の中には年齢や体力面にこだわらず行動したいという活動的な人も多くいらっしゃいます。

以前は自分で歩行支援用具を使ったり、介護者と一緒に安全に行ける範囲での外出が普通でしたが、現在では移動支援ロボットを使ってご高齢者自身が自由に外出することも増えいます。

今回は、この移動支援ロボットの意義や特徴について説明していきます。

(本文)
移動支援ロボットの利用者像
厚生労働省の小冊子「介護ロボット 導入・活用のポイント」にも記載されていますが、移動支援ロボットの利用者像としては基本的に、下記を想定しています。

「歩行の際に杖やシルバーカー、歩行車など何らかの歩行支援用具を既に使用している人で、歩行スピードの維持と向上や歩行距離の延長などを目指している人」

高齢者で活動的な人が外出する時に、もっと自分の好きな場所へ安全に行けるように支援するのが移動支援ロボットです。

さらに、自宅周辺環境に坂道や不整備地が多くて、通常の歩行支援用具では安全に歩くことが難しい人なども想定されています。

移動支援ロボットの主な特徴・機能と導入効果
移動支援ロボットは、基本的に高齢者の歩行を電気を使ってアシストするためのものです。

移動支援ロボットの条件としては

・4つ以上の車輪がある
・砂利道・歩道の段差などの不整備地を安定的に移動できる車輪径である
・普通自動車の車内やトランクに収納(折りたたみ式も可)できる大きさである
・マニュアルのブレーキがついている
・雨天時に機能に支障がないように防水対策がなされている
・介護者などが持ち上げられる重量(30kg以下)である

などがあります。

【移動支援ロボットの特徴と機能】
前述した条件を踏まえた上での移動支援ロボットの特徴と機能は、

・高齢者がひとりで用いる手押し車型(歩行車やシルバーカーなど)であること
・高齢者が自分の足で歩行することを支援することができる。搭乗する物は対象外
・荷物を載せて移動することができる
・モーターなどで移動をアシスト、上り坂などでは推進、下り坂ではブレーキをかける駆動力がある
・ブレーキを使うことで移動を止めることができる

などになります。

「モーターなどで移動をアシスト」というのは、軽くこぐだけで自分の足だけの時以上のスピードで走れる「電動機付き自転車」を思い浮かべるとわかりやすいと思います。

使用者はあくまでも自分の足を使って歩行して、移動支援ロボットは、歩くための力や速度を安定させるためにアシスト、これによって行動範囲を広げるメリットがあります。

また、荷物を載せられるのも大きなポイントです。ただ外出だけではなく、目的のために必要な荷物を持っての外出や買い物に行くこともできるわけです。

【開発が進む、装着型の移動支援ロボット】
余談として、現在では高齢者などが移動支援ロボットにつかまって移動するタイプですが、装着型の移動支援ロボットの開発も進んでいます。
人間が2本足でスムーズに歩く秘密を探る研究をベースにした技術を採用して、装着者の股関節の角度センサーからの情報でコンピューターが適切な姿勢を保つために制御をコントロール、歩幅と歩行のリズムのサポートで歩行を補助するといったものです。

移動支援ロボット導入時の注意点と使用環境に適した機器の調整
移動支援ロボットを導入するにあたっては、使用上の注意点や使用環境による機器の調整が重要になってきます。

【移動支援ロボット導入時の注意点】
移動支援ロボットを導入して使用するには、使用者が支援ロボットの操作をする必要があります。そのため、使用者の身体と認知の両機能がある程度満たされている必要があります。

<使用者の身体機能>
使用者は、移動支援ロボットのハンドル部分をグリップします。これによってセンサーが働き、歩行の自動アシストやブレーキ機能が作動します。また、グリップを握ることができないと自動ブレーキが作動することもあります。

これらの詳細は移動支援ロボットの種類によって異なってはきますが、全般的に「ハンドルのグリップを握ることができない」「上肢に強い痛みや痺れがある」といった場合には導入が難しくなってきます。

さらに「支持物があればひとりで安全に立ち座りができる」「往来の歩行器や歩行車を使って歩行ができる」「手動ブレーキや駐車ブレーキを操作できる」「歩くことで腰や膝、足首などに疲労や強い痛みを生じない」といった身体機能の条件があります。

<使用者の認知機能>
移動支援ロボットは電気を使って機能するので「電源のON・OFFやバッテリーの充電などの保守・管理が行える」もしくは「これらの協力が得られる支援者、介護者がいる」ことが必要です。

また、「道路の周辺環境を認知して、状況判断ができる」というのも認知機能の重要な注意点となります。さらに「認知機能や空間認識機能に問題がある場合には、リハビリスタッフなどの専門職に判断を仰ぐ」ことも必要です。

<使用環境に適した機器の調整>
移動支援ロボットを導入する人の自宅や施設によって、その周囲の環境はさまざまです。そして、導入する移動支援ロボットのメーカーや種類によっても、その機能や特徴が異なってきます。

より安全に移動支援ロボットを活用するためにも、利用者の使用環境や使用用途によって機器の調整が必要です。基本的な機器の調整は、周囲の環境によっての「歩行アシスト量」や「抑速量」「加速特性」「減速特性」「ブレーキのきき具合」などの調整です。

そして、移動支援ロボット全般の特徴や機能をしっかりと把握することも欠かせません。

「動作モード」「アシスト量」「走行可能時間」などを確認して、「支援ロボットの操作方法」や「バッテリー残量」「充電状況」などの見方も覚えなければなりません。

移動支援ロボットの調整も操作方法も、使用者がひとりでできるわけではないので、家族などの支援者や施設の介護者たちによるサポートが大切になります。

また、機器のメンテナンスや導入後の機能の再調整なども必須なので、これらを含めた、使用者に対するサポート体制をきちんと作った上での導入が望ましいと言えます。

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猪野由紀夫
専門家

猪野由紀夫(税理士)

DCC株式会社

長年の税理士と人事の経験を基に、障害者福祉事業の起業から指定申請、採用教育まで一貫した経営コンサルティングを提供しています。融資や介護ロボットの導入に関する補助金等の申請代行も積極的に行っています。

猪野由紀夫プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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