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太田英之(おおたひでゆき) / 司法書士

クローバー司法書士事務所

コラム

生前からの対策でトラブルを回避! 会社の相続手順と注意点

2019年12月4日

テーマ:相続

コラムカテゴリ:法律関連

被相続人(亡くなった人)が生前に会社を経営していた場合、相続人はその会社を相続することができますが、その方法は会社の経営形態によって変わってきます。
今回のコラムでは、会社を相続する基本的な流れとその際の注意点についてご説明します。

会社の相続手順

会社の経営形態は、主に「法人会社」と「個人事業」の2つのパターンに分けられます。そして複雑なのは「法人会社」の相続です。

法人会社とは、株式会社や合同会社等のことを指します。
よく会社の相続は、被相続人の社長という立場を相続すると思われがちですが、そうではありません。相続人が相続するのは、会社の「株式」や「出資持分」となります。

また、会社のお金や備品などはすべてが会社のものなので、社長だった被相続人の相続財産にはなりません。

もし相続人が社長の立場を引き継ぎたいのであれば、株主総会や社員総会によって選出される必要があります。

法人会社の基本的な相続手続きの流れ

【経営者が生前に行う場合の手順】
(1)会社の後継者を選ぶ
自身に代わり経営者となる後継者を選びます。

(2)株式を移転する
相続トラブルや相続税対策のため、生前のうちに会社の株式をできる限り後継者へと移転させておきます。
また、会社の相続が目的の株式移転の場合、贈与税や相続税が猶予される「事業承継税制」という制度を活用することもできます。

(3)事業用財産を移転する
経営者が所有している事業用の資産を、後継者に移転させます。これをしておかないと、後々にトラブルになることもあるので、忘れずにやっておきましょう。

(4)役員、社員たちに後継者を周知させる
役員や社員たちに、後継者に事業を継承させることを知らせます。ここでトラブルが発生することもあるので、後継者選びは慎重に行う必要があります。

(5)経営者としての教育を行い、経営権を移譲する
後継者がすでに社長としての知識や経験に問題がなければ、経営権を移譲して事業継承を終了します。
また経営者としての教育が必要であれば、まずは教育指導を行い社長に適した人材に育てます。

【経営者が亡くなった後の手順】
(1)遺言書を探す
後継者(相続人など)に事業承継をしていない状態で経営者が亡くなった場合、まずは被相続人の遺言書を探します。遺言書があれは、基本的にはその遺言通りに相続をします。

(2)資産や負債など会社の状況を調べる
会社を継ぐか否かを決めるためにも、資産や負債がどれくらいなのかを調べて把握します。調べる際には、会社の顧問税理士に確認を取るとよいでしょう。その時点での会社の経営状態がわかるはずです。

(3)会社を継ぐか継がないかを決める
後継者となる人が、会社を継ぐかどうかを判断します。この時には、以下の内容を考えるといいでしょう。

・その会社にどれくらい関与してきたか?
・自分に財務などの知識が十分にあるか?
・資産や技術力、収益性の状況はどうなのか?
・日常業務を回せるだけの従業員はいるのか?

さらに言えば、将来を見すえた経営方針を考えられるか? 自分に人を引っ張っていくリーダーシップはあるのか? なども考える必要があります。
社長になるということは、従業員たちの生活に責任を持つということにもなるので、慎重に判断しましょう。

【会社を継ぐ場合、継がない場合のポイント】
会社を継ぐのであれば、後継者は最低でも50%以上の株を取得します。こうすることで株主同士のトラブルを避けます。さらに事業用の財産も取得する必要があります。相続人が複数の場合には遺産分割協議をしましょう。

もし会社を継がないのであれば、株式や事業用財産にかかわらず他の相続人たちと話し合って遺産分割を行います。

個人事業の会社を承継する場合

会社が、経営者の個人事業の場合は、他の遺産相続と同様に相続人が被相続人の財産や負債を引き継いで会社を存続させることができます。
マイナスの負債がプラスの負債を上回る状態であれば、遺産放棄することも可能です。

会社を相続する際の注意点
会社を相続する時には、いくつかの注意点があります。

【株式の評価】
会社の株式は金銭的に評価され、相続税はその金銭的価値に対してかかります。株式の評価額が高ければ他の相続人と不公平が生じ、トラブルも起こりやすくなります。株式をきちんと評価するためにも、専門家に依頼するのがいいでしょう。

【相続税について】
会社の相続で相続税がかかるのは、主に以下の資産です。
・会社株式
・会社の事業用資産
・不動産
・預貯金
・会社への経営者からの貸付金
・生命保険

【事業用財産の相続】
株式の他にも、会社を動かすための事業用財産は、後継者が確実に相続しておく必要があります。社長になる相続人とは別の相続人が事業用財産を相続すると事業継承が難しくなるパターンもあります。

後継者が事業用財産を相続する方法は、以下の4通りです。
・生前にすべてを会社名義にして、株式を過半数確保する
・被相続人が遺言書で後継者に遺す
・生前贈与する
・亡くなった後に相続人たちの遺産分分割協議で決める

【会社の債務について】
会社の負債は相続の対象ではありませんが、会社を継げば経営者としてその負債を背負うことになります。
負債はその性質をしっかりと見極めることが大切なので、会社の貸付対照表や損益計算書などについて専門家に相談するようにしましょう。

【事業承継がうまくいかない時のリスク】
事業承継はなるべく速やかに行う必要があります。
相続人たちが後継者選びなどで迷っている間も、会社を運営していかなければなりません。リーダー不在が続くと、日々の業務処理が疎かになったり、社員たちの不安感から士気が下がったり、取引先からの信用失墜にもつながります。
会社の倒産を回避するためにも、迅速に行動しましょう。

そして多いのが、事業承継がきちんと行われていなかった場合の相続トラブルです。後継者以外の相続人たちが、不公平を理由に調停や訴訟を起こす可能性もあります。承継手続きに漏れのないように、十分に話し合っておきましょう。

スムーズに後継者に会社を継がせるための対策

会社の相続を迅速に、確実に行うためには、生前から対策を講じておくことが大切で、「生前贈与」や「遺言書」が有効な方法として挙げられます。

【生前贈与】
会社相続のいちばん確実な方法です。生前に引き継ぎを完了させることで、亡くなった後のトラブルのリスクも大幅に減らすことができます。

【遺言書】
遺言書により後継者を指定、株式その他の財産を相続させるようにすることも、確実性が高い方法です。
遺言書は、後々のトラブルを防ぐためにも公正証書として作成することをおすすめします。

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